政府は来年度からの「異次元の少子化対策」の財源について、「徹底した歳出改革」を軸に確保する方針だ。3年間の集中期間中に積み上げる年3兆円規模の追加財源のうち、公的医療保険料の引き上げなど新たな負担は1兆円程度に抑制。2兆円規模を、社会保障費の歳出削減や既にある予算の活用などで捻出することを目指す。ただ、医療・介護の歳出削減に切り込めば業界や国民の強い反発も予想され、調整は難航しそうだ。
 岸田文雄首相は24日の衆院予算委員会で、少子化対策の財源について「国民の実質的な負担を最大限抑制するため、歳出改革を徹底し、併せて既定予算の最大限の活用を行う」と強調した。同日夕には小倉将信こども政策担当相ら4閣僚と首相官邸で面会。6月にまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に反映させる少子化対策の戦略方針の素案を協議した。
 首相が議長を務め、関係閣僚や有識者が参加する「こども未来戦略会議」は今月22日に財源を巡る議論を本格化させた。会議で、首相は「消費税を含めた新たな税負担は考えていない」と早々に増税論議を封印。歳出削減に白羽の矢が立った格好だ。
 一方、首相は同日の会議で、子ども・子育て支援策に関し「歳出改革の積み上げなどを待つことなく、前倒しで速やかに実行する」と強調した。このため財源措置が間に合わない当初2年程度は、将来の歳入で償還する「つなぎ国債」を発行して充当する方針だ。
 財源の柱となる歳出削減は、社会保障分野での実現を目指す。社会保障以外の分野については、「歳出改革分を(増額する)防衛費に回す必要がある」(財務省幹部)からだ。
 具体的には、医療分野のデジタル化による重複投薬・検査の回避などを視野に入れる。もっとも、これだけで兆円規模の捻出は困難。診療や介護、調剤報酬の見直しのほか、所得や資産に応じた高齢者の負担の在り方など、国民生活に広く影響を与えるような課題も検討対象となる可能性がある。 (C)時事通信社