中耳炎は乳幼児が高頻度に罹患する疾患の1つが、近年の研究により、プロバイオティクスには中耳炎の予防効果があることが知られている。しかし、乳幼児に身近なバイオティクスであるヨーグルトの習慣的な摂取が中耳炎予防にどの程度の効果をもたらすかは不明だ。東北大学病院顎口腔機能治療部の土谷忍氏らの研究グループは、母親と子供のヨーグルトの習慣的な摂取頻度と子の乳幼児期の中耳炎罹患の関連を検討したところ、母子ともにヨーグルト摂取頻度が高いほど中耳炎の罹患リスクが低いことが示されたとProbiotics Antimicrob Proteins(2023年5月17日オンライン版)に報告した。

母子のヨーグルト摂取頻度で5群に分け検討

 咽喉と中耳は直接つながっており、喉の細菌叢は中耳炎の発症因子としても重要視されている。また、乳児における喉の細菌叢の出現は、出生直後の母子間の接触から始まると考えられている。これらのことから、習慣的なヨーグルト摂取は免疫機構を中心とした喉の環境に影響を及ぼし、感染症発症予防の観点からも推奨されている。

 そこで土谷氏らは、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国出生コホート研究(エコチル調査)」の9万5,380組の母子を対象に、母子それぞれのヨーグルトの習慣的な摂取頻度(ほとんどなし、1〜2回/週、3〜4回/週、5〜6回/週、毎日の5群)と子の中耳炎の発症(生後6カ月、1歳、1歳6カ月、2歳時点で「過去6カ月間に医師による診断を受けたか」を質問)の関連を解析した。母親については出産年齢、妊娠期間、授乳方法、教育歴、喫煙と飲酒習慣、世帯年収、パートナーの育児協力度を、子供については性、兄弟、先天性疾患の有無を調整後、一般化線形モデルを用いて検討した。

生後6カ月時点で毎日摂取群では46%のリスク低下

 子の中耳炎の発症は1万4,874例(15.6%)に認められた。解析の結果、ヨーグルト摂取が高頻度であるほど乳幼児期の中耳炎罹患リスクの低下が認められた(図-左)。成長とともに予防効果は減弱する傾向が見られたが、中耳炎の罹患リスク比が最も低かったのは生後6カ月時点で、ほとんど摂取しない群に対し毎日ヨーグルトを摂取する群では46%のリスク低下が認められた(リスク比0.54、95%CI 0.46〜0.63)。

 生後2年間における中耳炎の累積罹患回数〔1万4,874人、最大4回〕とヨーグルト摂取の関連を解析したところ、ヨーグルトの摂取頻度が高いほど中耳炎の罹患リスクが低下することが示された。

 さらに興味深いことに、妊娠中の母親のヨーグルト摂取が高頻度であることも、子供の中耳炎罹患リスクの低下と弱いながらも有意な関連が認められた(図-右)。

図. 母子それぞれの習慣的なヨーグルト摂取頻度と中耳炎の罹患リスクの関連

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(東北大学プレスリリースより)

 今回の結果について、土谷氏らは「母子それぞれがヨーグルトを習慣的に摂取することが子の乳幼児期の中耳炎罹患リスク低下と関連するとともに、妊娠期からのプロバイオティクス摂取習慣が有用である可能性も示された。しかしながら、大規模コホート研究であるため摂取した菌の種類や量については検討していない。今後、より詳細な追加研究が必要だ」と述べている。

編集部