京都大などの研究グループは30日までに、日本など35カ国、10万人余りの健康状態を調査した結果、退職した人は働き続けている人より心臓病のリスクが低いことが分かったと発表した。論文は8日発行の国際疫学会の学術誌に掲載された。
 研究チームは、1990年代から欧米やアジアの35カ国の50~70歳の10万6922人を平均6年7カ月間、継続調査した。健康状態が悪い人ほど退職しやすい傾向にあることから、こうした影響を取り除く統計手法「操作変数法」を用いて、心臓病や肥満などの健康状態や退職の有無を詳しく分析した。
 その結果、退職した人は働き続けている人よりも心臓病のリスクが2.2ポイント低いことが判明。運動不足の傾向も退職した人の方が3.0ポイント低かった。
 また、デスクワークが中心だった人は、退職すると心臓病や肥満運動不足のリスクが低下していた。一方、肉体労働が主だった人は退職によって、肥満になりやすい傾向にあった。
 調査した京大大学院医学研究科の佐藤豪竜助教は「退職すると運動する機会が増えることが要因の一つではないか。働き続ける場合は運動する機会を意識的に設けることが重要になる」と話している。 (C)時事通信社