慶応大の研究チームは2日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って発見した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬候補について、国内治験に加え、国際的な大規模データベースの活用により、進行を遅らせる効果を再確認したと発表した。研究成果は同日、国際科学誌に掲載された。
 ALSは神経細胞が壊れ、全身の筋肉が衰える進行性難病で、国内患者は約1万人とされる。慶応大の岡野栄之教授らは、患者の血液を基に作ったiPS細胞から神経細胞を作製し、既存薬の効果を検証。2021年5月、20人への医師主導治験の結果、パーキンソン病治療薬「ロピニロール塩酸塩」に進行を遅らせる効果が確認できたと発表した。
 研究チームは新たに患者約1万人分の臨床記録を集めた国際的なデータベースを活用。進行度が20人と同程度の176人を対象に比較した。
 その結果、同薬を服用した20人は、治験開始29週以降では病気の進行が遅れたことが確認できた。研究チームは「ロピニロール塩酸塩の有効性が改めて分かった。ただ効果が出るまでに時間がかかるため、発症後、早期かつ長期的に服用することが重要だ」と指摘している。 (C)時事通信社