国立がん研究センターは3日までに、子宮頸(けい)がんの特徴や予防法をまとめた報告書を作成し、ホームページで公開した。原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐワクチンの接種や検診で予防可能なことを訴えるのが狙いだ。
 報告書によると、日本では年約1万1000人が子宮頸がんと診断され、約3000人が亡くなっている。死亡率は、1990年前後は米国や英国、カナダなど他の先進国より低かったが、HPVワクチンの接種を推し進めた他国は減少する一方、日本は横ばいが続き、現在は上回っている。新たに診断される罹患(りかん)率も特に若年層で増加し、他国より高い状態だ。
 子宮頸がんの95%以上はHPVへの持続感染が原因で、HPVは性行為で生じた粘膜などの傷から侵入する。報告書では、予防にはワクチンが重要だが、日本では積極的勧奨が昨年4月に再開されたばかりで接種率は低いと指摘。ワクチンの安全性に特段の懸念はなく、有効性が副反応のリスクを上回ることも紹介した。
 ただ、ワクチンには、既に感染したHPVを排除する効果はない。さらに、ワクチンで予防できないタイプのウイルスもあるため、子宮頸がん検診を受ける必要性も強調した。
 同センターの片野田耕太データサイエンス研究部長は「子宮頸がんはワクチンと検診で予防可能な『珍しいがん』だということを改めて知ってほしい」と話している。
 報告書は「ファクトシート」の名称で公開されている。URLはhttps://www.ncc.go.jp/html/icc/hpvcancer/index.html。 (C)時事通信社