米・University of Alabama at BirminghamのSurya P. Bhatt氏らは、吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性抗コリン薬(LAMA)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)の3剤併用療法を行っているにもかかわらず、2型炎症の指標の1つである血中好酸球数の増加が見られる慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象に、標準治療へのヒトモノクローナル抗体デュピルマブ上乗せの有効性と安全性を第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)BOREASで検討。その結果、プラセボ群と比べてデュピルマブ群でCOPDの増悪が少なく、肺機能およびQOLが良好かつ呼吸器症状が軽症だったとN Engl J Med2023年5月21日オンライン版)に発表した。

中等度~重度増悪がプラセボに比べ30%減少

 BOREAS試験では、24カ国275施設でCOPDと診断され、標準のICS/LAMA/LABA 3剤併用療法を行っているにもかかわらず血中好酸球数が300個/μL以上で増悪のリスクが高い患者939例(平均年齢65.1歳、男性66.0%)を登録。標準治療に上乗せしてデュピルマブ300mg(468例)またはプラセボ(471例)を2週間に1回皮下投与する群に1:1でランダムに割り付け、52週間治療した。

 解析の結果、主要評価項目とした中等度~重度増悪の年間発生率(年間イベント数)は、プラセボ群の1.10(95%CI 0.93~1.30)に対し、デュピルマブ群では0.78(同0.64~0.93)と30%有意に低かった(発生率比0.70、95%CI 0.58~0.86、P<0.001)。

気管支拡張前FEV1、QOL、呼吸器症状が有意に改善

 肺機能に関しては、12週時点における気管支拡張薬投与前1秒量(FEV1)のベースラインからの変化量(最小二乗平均値)がプラセボ群の77mL(95%CI 42~112mL)に対し、デュピルマブ群では160mL(同126~195mL)と、有意な改善効果が認められた(最小二乗平均差83mL、95%CI 42~125mL、P<0.001)。この改善効果は52週時点でも維持されていた(同83mL、38~128mL、P<0.001)。

 QOLに関しては、52週時点におけるSt. George's呼吸質問票(SGRQ)合計スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)がプラセボ群の-6.4(95%CI -8.0~-4.8)に対し、デュピルマブ群では-9.7(同-11.3~-8.1)と、改善幅が有意に大きかった(最小二乗平均差-3.4、95%CI -5.5~-1.3、P=0.002)。

 呼吸器症状に関しては、52週時点における症状の重症度を評価するEvaluating Respiratory Symptoms in COPD(E-RS-COPD)合計スコアの変化量(最小二乗平均値)がプラセボ群の-1.6(95%CI -2.1~-1.1)に対し、デュピルマブ群では-2.7(95%CI -3.2~-2.2)と有意に低下していた(最小二乗平均差-1.1、95%CI -1.8~-0.4、P=0.001)。

有害事象はプラセボと差なし

 安全性の評価では、デュピルマブ群とプラセボ群でなんらかの有害事象(77.4% vs. 76.0%)、重篤な有害事象(13.6% vs. 15.5%)、有害事象による死亡(1.5% vs. 1.7%)および投与中止(3.0% vs. 3.4%)の発生率はいずれも同等だった。

 以上を踏まえ、Bhatt氏らは「2型炎症であることを示す血中好酸球数の増加が見られるCOPD患者において、デュピルマブはプラセボと比べて有意に増悪を抑制し、肺機能、QOL、呼吸器症状の重症度を改善した」と結論。「インターロイキン(IL)-4/13受容体を阻害するデュピルマブが改善効果を示したという結果は、2型炎症を呈するCOPDの病態生理学的特性にIL-4/13が関与していることを裏付けるものだ」と述べ、「デュピルマブはIL-4/13受容体阻害を介して杯細胞増生、粘液過分泌、気道リモデリングの抑制に関与している可能性がある」との見解を示している。

(太田敦子)