新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げられたことで、マスクの着用緩和やアクリル板の撤去といった動きがこの1カ月で進んでいる。一方、重症化が懸念される高齢者らがいる施設は、引き続き感染拡大に注意を払う。
 吉本興業が運営する劇場「なんばグランド花月」(大阪市)では5類移行後、客や出演者、スタッフは原則マスク不要とし、客席での飲食も可能になった。6日に劇場を訪れた兵庫県の女性会社員(52)は「もういいのでは。若い人、子どもも外している」と「脱マスク」の方針を歓迎。奈良県から来た女子高生(17)は「昨年と比べて観客が増えた。笑い声も増え、いいと思う」と話した。
 不要になったアクリル板を回収する動きも進む。プラスチック総合商社の緑川化成工業(東京都台東区)は、昨年12月から引き取りキャンペーンを始めた。5月以降、処分に困った企業からの相談が急増し、4月下旬に約2トンだった回収量は、今月初めには約12トンまで増加。担当者は「とにかく忙しい。この先どれくらい増えるか想像もできない」と話す。
 高齢者施設も入居者との面会などを徐々に再開している。東京都三鷹市の介護老人保健施設「三鷹ロイヤルの丘」は感染拡大後、面会を予約制とし、1日5組ほどに限定。週1回程度、ロビーなどでアクリル板越しに30分間としていたが、3月中旬から居室での面会に戻した。
 母(93)の様子を見にほぼ毎日訪れる自営業の菅根圭也さん(64)は、2月に母が病院に入院した際「環境が変わると、うつのような症状が出ることがあり気が気でなかった」と振り返る。同施設に移って直接面会できるようになり、コミュニケーションの大切さを感じているという。
 竹原真也事務長によると、同施設では過去2回、新型コロナのクラスター(感染者集団)が発生した。引き続き感染対策には気を使っているが、「せきが出たら休ませるなど、職員の意識が高まってきた」と、経験の積み重ねに自信を見せる。 (C)時事通信社