くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤(りゅう)の発生に関与する遺伝子変異を見つけたと、理化学研究所と山梨大などの研究チームが14日付の米科学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンに発表した。これらの遺伝子は腫瘍形成にも関与しており、特定の抗がん剤の投与で発生を抑えられることも判明。薬物治療への道を開くと期待される。
脳動脈瘤は脳内の血管が局所的に膨らみ、破裂すると致死率の高いくも膜下出血につながる。日本人の5%に未破裂の脳動脈瘤があるとされるが、治療には開頭手術や血管カテーテルなどの外科的手法しかなく、有効な治療薬はない。
理研脳神経科学研究センターの中冨浩文チームリーダーらは、手術で摘出された脳動脈瘤の組織の遺伝子を詳しく解析。65検体のほとんどで変異が検出された16の遺伝子を特定した。
これらの遺伝子の一部は炎症やがんの関連遺伝子として知られていた。難治性の脳動脈瘤では、PDGFRβという遺伝子に変異が生じており、血管の弱体化などを引き起こしていることが分かった。
研究チームは、マウスを使った実験で、同遺伝子の変異が脳動脈瘤を引き起こすことを確認。さらに、PDGFRβの働きを抑えることが知られている腎臓がんなどの治療薬を投与したところ、動脈瘤化が抑制できることも分かった。 (C)時事通信社
脳動脈瘤関与の遺伝子変異=薬物治療に可能性―理研など
(2023/06/15 03:16)