ビタミンDサプリメントの摂取により高齢者の主要心血管イベント(MACE)リスクが低減し、その保護作用はスタチンなどの使用例でより顕著な可能性が示された。オーストラリア・QIMR Berghofer Medical Research InstituteのBridie Thompson氏らは、同国の高齢者を対象にビタミンDサプリメント摂取とMACE発生リスクの関係を二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)で検討。結果をBMJ(2023; 381: e075230)に報告した。
2万人超に5年間介入
これまでの観察研究で血清25-水酸化ビタミンD〔25(OH)D〕濃度と心血管疾患(CVD)に逆相関関係が示されていたが、RCTではビタミンDサプリメントがMACEを減少させるというエビデンスは得られていなかった。既存のRCTのほとんどがビタミンDとCVDの関係を適切に評価するデザインではなかったとして、Thompson氏らは今回、ビタミンDサプリメント摂取による高齢者集団の健康改善効果を検討するRCT としてD-Health Trialを実施した。
同氏らは、2014~15年にオーストラリアで登録した60~84歳の参加者2万1,315人をビタミンD群1万662人とプラセボ群1万653人に1:1でランダムに割り付けた。高カルシウム血症、腎臓結石、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、サルコイドーシスを有する者、ビタミンDサプリ500IU/ 日超を摂取している者は除外。ビタミンD群には6万IUのビタミンD3錠剤を、対照群にはプラセボ錠剤を毎月、5年間摂取してもらった。ビタミンD群の8,552人(80.2%)とプラセボ群の8,270人(77.6%)が5年間の介入期間を完遂した。
主要評価項目はMACE(心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建術)の発生とし、Flexible parametric survival modelsを用いてハザード比(HR)と95%CIを算出した。
MACE発生リスクが9%低下
解析対象は2万1,302人(プラセボ群1万644人、ビタミンD群1万658人)。介入期間は中央値で5年、試験薬を少なくとも80%摂取したのはそれぞれ8,783人(82%)、9,006人(84%)だった。
5年間にMACEが1,336件〔プラセボ群699件(6.6%)、ビタミンD群637 件(6.0%)〕発生し、有意ではないもののプラセボ群に対しビタミンD群でMACE発生リスクが9%低下した(HR 0.91、95%CI 0.81~1.01、交互作用のP<0.05)。
ベースライン時の特性別に検討すると、スタチン使用例(HR 0.83、95%CI 0.71~0.97、交互作用のP=0.14)、CVD治療薬使用例(同0.84、0.74~ 0.97、交互作用のP=0.12)、推定血中25(OH)D濃度50nmol/L以上例(同0.87、0.76~0.98、交互作用のP=0.14)で有意でないもののビタミンDサプリによるMACE発生リスクの低下傾向が認められた。
5年で1,000人当たりMACE 5.8件減少
ビタミンDサプリ摂取はMACEを5年で1,000人当たり5.8件減少させ(5年時の標準化累積罹患率の差-5.8件、95%CI −12.2~0.5件)、MACE 1件を予防するための治療必要数は172人と算出された。
MACEの内訳別では、ビタミンD群で心筋梗塞リスクが19%(HR 0.81、95%CI 0.67~0.98)、冠血行再建術リスクが11%(同0.89、0.78~1.01)低かったが、脳卒中リスクの低下は認められなかった(同0.99、0.80~1.23)。
以上を踏まえ、Thompson氏らは「ビタミンDサプリ摂取により、高齢者のMACE発生リスクが低減する可能性が示された。サプリの保護作用はスタチンやその他のCVD治療薬使用例でより顕著なことが示唆された。今後さらなる検証を行う必要がある」と結論している。
(大江 円)