岡山大学大学院産科・婦人科学教室教授の長尾昌二氏らは、卵巣がんに対する術後のカルボプラチン腹腔内投与によるdose-dense(投与間隔短縮)パクリタキセル+カルボプラチン併用(dd-TC)療法の有効性と安全性をカルボプラチン静注によるdd-TC療法と比較する第Ⅱ/Ⅲ相非盲検ランダム化比較試験GOTIC※1-001/JGOG※2-3019/GCIG※3(iPocc)を実施。カルボプラチン腹腔内投与dd-TC療法により、残存病変の量にかかわらず無増悪生存(PFS)が有意に延長したことなどをNEJM Evid2023; 2: EVIDoa2200225)に報告した。

残存病変が2cm超の患者が半数以上

 進行卵巣がんでは腹膜播種を伴うことも多く、既報では抗がん薬の腹腔内投与が有効であることが示唆されているが、試験デザインに起因する効果の不確実性、毒性への懸念や治療完遂率の低さなどから普及には至っていない。

 iPocc試験の対象は国際産科婦人科連合(FIGO)進行期分類Ⅱ〜Ⅳで開腹/腹腔鏡による手術を予定している上皮性卵巣がんまたは卵管がん、原発性腹膜がん患者。第Ⅲ相パートでは、2010年5月〜16年8月に日本、シンガポール、韓国、ニュージーランド、米国、香港から655例を登録、全例に21日間を1サイクルとして1日目、8日目、15日目にパクリタキセル80mg/m2を投与し、3週ごとのカルボプラチン〔曲線下面積(AUC)6.0〕腹腔内投与を上乗せするdd-TCip群(328例)または同薬(AUC 6.0)静注を上乗せするdd-TCiv群(327例)にランダムに割り付けた。

 年齢中央値はdd-TCip群が59.0歳(範囲32〜84歳)、dd-TCiv群が59.0歳(30〜82歳)、アジア人/日本人の割合はそれぞれ92.4%、90.8%で、残存病変が2cm超の患者の割合は55.0%、55.5%で、両群の背景に差はなかった。

 dd-TC療法は初回手術後に6サイクル施行し、化学療法中の腫瘍減量術(Interval debulking surgery;IDS)は3〜5サイクル完了後に認められ、その後に最大3サイクルの実施を可能とした。dd-TCip群の11.0%が腹腔ポートの漏出や破損/障害、腹腔内感染、腟吻合部漏出などによりdd-TCip療法に変更された。

 主要評価項目はPFSとし、副次評価項目は全生存(OS)、奏効率、治療完了率、有害事象の発現率などとした。

再発リスクが17%減少

 検討の結果、PFS中央値はdd-TCiv群の20.7カ月(95%CI 18.1〜22.8カ月)に対してdd-TCip群では23.5カ月(同20.5〜26.9カ月)と有意に延長した〔ハザード比(HR)0.83、95%CI 0.69~0.99、P=0.04、〕。術後の病理診断などにより非適格とされた症例を除外した集団(mITT)でも、それぞれ20.0カ月(95%CI 18.0〜22.2カ月)、22.9カ月(同19.6〜26.9カ月)と、dd-TCip群で有意に延長した(HR 0.78、95%CI 0.65〜0.94)。

図. PFS(主要評価項目)

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NEJM Evid 2023; 2: EVIDoa2200225)

 FIGO進行期分類、残存病変の大きさ、年齢、全身状態、IDSの有無、組織型別に見たサブグループ解析においても、一貫してddTCip群の優位性が示された。

 OS中央値はdd-TCiv群の67.0カ月(95%CI 55.4〜78.2カ月)に対してdd-TCip群では64.9カ月(同56.4~84.9カ月)と有意差はなかった(HR 0.95、95% CI 0.77~1.17)。測定可能な残存病変を有する症例(dd-TCip群168例、dd-TCiv群171例)における奏効率はそれぞれ70.2%、72.6%と差はなかった(P=0.633)。

 dd-TCip群では、カテーテル関連の合併症として腹腔内漏出(5.7%)、カテーテル閉塞(2.7%)などが認められた。腟吻合部漏出はdd-TCiv群の1例に対してdd-TCip群では17例に認められ、4例では再縫合が行われた。ただし、これらを除く有害事象は両群でほぼ同様で、グレード3以上の発現率はdd-TCip群が93.2%、dd-TCiv群が96.0%だった。6サイクルの完了率はそれぞれ59.9%、68.3%だった。

 長尾氏らは「パクリタキセルにカルボプラチン腹腔内投与を上乗せするdd-TC療法により、カルボプラチン静注上乗せと比べてPFSを有意に延長した。OSに差はなかったが、5年PFSは約7%良好で、10年にわたって生存曲線が交差することなく維持されていた点は注目に値する」と強調。残存病変の大きさにかかわらず効果が得られた点については「プラチナ製剤は水溶性であり、腹膜から全身循環を介して悪性腹膜病変に到達すると同時に腹腔内の薬剤濃度が上昇するため、より大きな残存病変への効果が期待できる」と推察している。

 同試験の結果を受け、適応拡大申請に向けた準備が勧められているという。

(編集部)

  • ※1 Gynecologic Oncology Trial and Investigation Consortium:婦人科がん臨床試験コンソーシアム
  • ※2 Japanese Gynecologic Oncology Group:婦人科悪性腫瘍研究機構
  • ※3 Gynecological Cancer Intergroup