経済産業省の菅原郁郎事務次官と同省の20~30代の若手が作成した政策提言「不安な個人、立ちすくむ国家」が話題になっている。社会保障や教育、高齢者の働き方など同省の所管する範囲を超え、日本社会の幅広い課題に切り込んだのが特徴だ。5月にウェブサイトで公表してから約1カ月間で、ダウンロード数は120万件を突破。官庁の政策提言では珍しく、インターネット交流サイト(SNS)を通じて広がりを見せている。
 提言は、少子高齢化について「高齢者が支えられる側から支える側へと転換するような社会を作り上げる必要がある。見逃し三振はもう許されない」と指摘。さらに「『シルバー民主主義』を背景に大胆な改革は困難と思い込み、誰もが本質的な課題から逃げている」と強調するなど、中央省庁の資料としては異例の表現が並ぶ。
 こうした官庁の政策提言は通常、報道で紹介される程度。しかし、今回は若手研究者や官僚出身の論客らがSNSなどで取り上げたことで、ネット上で論争を呼び、異例のヒットにつながった。
 菅原次官は「今までにない広がり方で、うれしい驚きだ」と述べ、今後は別の政策に関しても同様の手法で提言していく考えを示している。
 ◇不都合な真実を直視=経産次官の一問一答
 経済産業省の菅原郁郎事務次官は19日までにインタビューに応じた。一問一答は次の通り。
 -政策提言は異例の内容だった。
 これまでとの違いを意識した。不都合な真実を見ないふりをするのが役人の性質だが、それを直視しようとした。さらに、役人としての忖度(そんたく)や配慮を排除し、読者に届くような表現にした。
 今までの役所のリポートは「作ったぞ、読め」というものばかりだったが、今回は相手に読んでもらうところまで意識した。若手の発案で、インターネットを通じて届けることもやってみた。今までにない広がり方で、うれしい驚きだ。
 -問題提起には批判もある。
 批判で多いのは「解決策や答えを示さないのは無責任だ」というものだ。しかし、社会保障や教育は人々と一緒に考える問題で、役所が答えを出して「さあ、どうだ」というものではない。それが今までの失敗だった。
 -提言のやり方に一石を投じた。
 今まで形式的なやり方で終わらせていて、本当に政策を知りたい人に届け切れていなかった。今回、批判も含めて意見をもらえるルートが広がった。別の政策でもこれを生かしていきたい。外交や民族・宗教など、今そこにある問題がいっぱいある。何らかの提言を続けたい。 (C)時事通信社