民進党が安倍政権との対立軸を打ち出そうと、具体策づくりを急いでいる。同党の「尊厳ある生活保障総合調査会」で、経済・社会保障政策のアドバイザー役を務める井手英策慶応大教授(45)に話を聞いた。
 -井手氏は「自己責任社会」からの脱却を主張しているが。
 日本は、自分で働いて貯金をため、子の教育、医療、住宅購入、老後の備え、これら全てを自己責任で何とかする社会をつくってきた。今は家計貯蓄率がゼロ%近くまで落ち、世帯収入300万円以下が全体の34%、400万円以下は47%だ。子どもを2~3人生み、大学まで進学させるのは厳しい。
 多くの人が生活に苦しみ、将来に不安を感じている。アベノミクスにオリンピック需要が重なっても経済は実質1.2%しか成長できていない。価値観の転換が必要だ。財源論から逃げずに、経済成長とは違う方法で人々を将来不安から解き放つべきだ。
 -消費税率を引き上げ、高福祉・高負担の社会にするのか。
 あえて言うなら、中福祉・中負担だ。財政の大きさは国民の選択だ。増税ありきで捉えられがちだが、国民の生活費用を税に置き換え、全ての人々の暮らしを楽にするという発想だ。
 例えばだが、消費税率を現行の8%から15%に引き上げると税収は20兆円増える。もし財政再建が気になるなら、半分の10兆円で基礎的財政収支(プライマリーバランス)はほぼ黒字化する。
 幼稚園、保育園、大学授業料、医療、介護、障害者の自己負担費用が約11兆円。残りの増収分10兆円でも自己負担は劇的に軽くなり、格差も相当縮む。今よりはるかに安心な社会がつくれる。
 -「貯金ゼロ」でも安心できる社会をつくるということか。
 そうだ。貯金ゼロ社会は不安ゼロ社会だ。税をうまく生かして暮らしを楽にし、将来不安を終わらせる。これが民進党の目指すべき道だ。 (C)時事通信社