突然死を招く肥大型心筋症の原因遺伝子を持つ男性の精子について、健康な女性の卵子と体外受精を行う際に遺伝子の変異を修正する実験に成功したと、米オレゴン健康科学大や韓国・基礎科学研究院などの研究チームが2日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
 全遺伝情報(ゲノム)のDNA配列を容易に切断、改変できる「ゲノム編集」と呼ばれる技術を応用。実験は米国で、遺伝子変異を修正した体外受精卵を母胎に移植しないことを前提とする基礎研究として行われた。
 将来、技術水準が向上して成功が確実になれば、遺伝性疾患が親から子に受け継がれるのを防止できる。一方で、ゲノム編集の応用をめぐっては、親が子の容姿を好みにデザインするなどの可能性が懸念されており、研究チームは臨床応用には社会的な合意も必要だと強調している。
 ヒトの体外受精卵で遺伝子変異をゲノム編集で修正する実験の論文は、2015年以降、中国の研究者らによる発表が相次いでいた。いずれもリボ核酸(RNA)と酵素で構成される「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」と呼ばれる最新のゲノム編集技術を使っており、今回の実験も同様。
 しかし、精子と卵子の体外受精後に「CRISPR/Cas9」を導入するのではなく、体外受精と同時に導入する工夫をした。その結果、受精卵が分裂増殖した際に、遺伝子変異を修正し損ねた細胞が交ざる事態を防げた。 (C)時事通信社