統一政府が存在しないアフリカ北東部ソマリアで、コレラの感染が広がっている。今夏、現地入りして治療を行った日本赤十字社和歌山医療センターの古宮伸洋医師が帰国して状況を語った。
 派遣は6月末~8月初め。カナダやノルウェーの支援活動に応援で加わった。ソマリアでは昨年から日照りが続き、家畜を失った遊牧民が町へ流入、衛生環境が悪化する中、コレラの感染が広まった。支援が本格化したのは5月から。古宮医師も派遣要請から5日後に慌ただしく日本を出発した。
 ソマリアでは、イスラム過激派アルシャバーブのテロが続く。古宮医師も、派遣要請を聞いて「少しおじけづいた」と語る。派遣先の北部「ソマリランド共和国」は南部の首都モガディシオと比べ「治安の状態は悪くない」(古宮医師)が、隣接するプントランドでは5月に過激派組織「イスラム国」(IS)を名乗る自爆テロが起きている。
 「海外の支援団体を過激派が狙っている」と警告され、古宮医師らには共和国政府からの指示で移動には軍や警察の護衛が付いた。「写真の撮影も一切だめ」と言われた。
 赤十字はソマリランド中部ブラオに仮設病院を開設。コレラ患者は脱水で死亡してしまうことがあるが、「治療すれば、死なない病気」(古宮医師)でもある。水と電解質を与える経口補水液を摂取すれば、入院から3日で退院できるという。
 古宮医師は2014年、エボラ出血熱の感染が拡大していたアフリカ西部リベリアに派遣された経験がある。強力な感染力と高い致死率。酷暑の中、防護服に身を包み治療に当たる際は「最初のミスが最後のミス」といわれた。当時、医師たちは「自分が死ぬかも」と覚悟しながら、やっていたと古宮医師は振り返る。
 それに比べれば、コレラは「対策が取れていれば感染しない。今回の派遣中も感染したスタッフは1人もいなかった」と古宮医師。コレラは予防も可能だが、赤十字が調査したブラオ一帯の飲み水は「例外なく大腸菌に汚染されていた。要するにふん便に汚染されている」と指摘した。
 派遣された1カ月、担当した患者は約600人。死者を1人も出さずに済んで、治療すればコレラ患者は助けられることを改めて示した。それでも、仮設病院到着が間に合わず、「昨夜、子供がコレラで亡くなりました」と語っていた一人の母親の姿が忘れられないという。 (C)時事通信社