司法解剖などを担う解剖医の慢性的な不足に対応し、「府立大阪はびきの医療センター」(大阪府羽曳野市)が4月から、警察の要請で死因を調べる「新法解剖」の受託を始めた。大学病院の法医学教室以外の場所で行うのは全国初といい、関係者は体制充実や死因究明の質向上を期待する。
 新法解剖は、2013年4月施行の「死因・身元調査法」に基づき、司法解剖するほど事件性が濃くない場合でも、警察が死因究明が必要と判断すれば遺族の承諾なく解剖できる制度。07年の時津風部屋の力士暴行死事件で、愛知県警が司法解剖せず「病死」としていた問題などを受け、犯罪の見逃し防止に導入された。
 ただ、16年に全国で行われた司法解剖と新法解剖は計約1万1000件。一方、担当する解剖医は143人にとどまり、1人しかいない県も15に上るなど、不足は深刻だ。
 同センターは、府内の解剖医不足や地域的な偏りを受け、4月に府南部の新法解剖の受託を開始。担当する森田沙斗武医師(35)は、普段は肺がん治療を専門にする内科医だが、法医認定医の資格も持ち、すでに約20例の新法解剖を行った。
 森田医師によると、臨床医志望の学生が大半な上、法医学に興味があっても進路が法医学教室に限られるため、選ばない学生が多いという。「法医学の知識は臨床にも生きる。両立の道があることを自分の活動を通して示したい」と意気込む。
 法医学者も、解剖医の裾野拡大を歓迎する。大阪大の松本博志教授は「高齢者の孤独死などが増える中、地域の病院に死因まで診られる臨床医がいる意義は大きい」と強調。「モデルケースとして広がってほしい」と期待した。
 近畿大の巽信二教授も「法医学者の司法解剖はあくまで事件解決の窓口。一方、事件性は低くても死因を究明する新法解剖には、疫学的な意義もあり、治療のプロである臨床医や病理医が行った方がいい」と指摘。「解剖データを医療現場に還元できれば望ましい」と話している。 (C)時事通信社