医療・医薬・福祉

精密なゲノム医療実現を目指す病理製品の開発

公益財団法人 佐々木研究所附属杏雲堂病院
~個別化医療を行うための遺伝子検査を支える詳細なプロトコール~

佐々木研究所附属杏雲堂病院では、岩屋啓一病理部長らの病理検査グループが、中岡博史腫瘍ゲノム研究部長の協力を得て、ゲノム医療を支えるホルマリン固定パラフィン包埋ブロックの新たなコンタミネーション防止対策の開発に成功しました。病理検査室では、患者さんから採取した組織を、ゲノム医療に対応した遺伝子検査に用いるための厳密な加工を行います。従来の病理検査室の加工工程では、微量の核酸が混入することにより遺伝子診断の精度に大きな影響を及ぼしかねません。その結果、患者さんはゲノム医療を受けられない精神的苦痛に加えて、個人の経済的損失は十数万円、社会全体では年間少なく見積もっても数億円と試算されます。本研究では、遺伝子診断に繋がる病理作業工程において、特殊なポケットを使用することにより、ひとつの解決法を見出しました。本開発・研究成果に関する論文は、米国科学誌「PLOS ONE」に掲載され、多くの方が共有できる独立したDOIを有したプロトコールとともにオンライン版で公開されました。(2022年5月5日 4時(日本時間))


癌遺伝子パネル検査に供するバイオマテリアルとして、ホルマリン固定パラフィン包埋ブロック(FFPE)の品質管理が問われています。FFPEから抽出されたDNAにはコンタミネーションが約5 %の症例に検出され、意味のある遺伝子異常の検出感度が著しく低下し、患者さんの治療に役に立つような精密な遺伝子診断が不可能になっています。今回、FFPEを作成する際に、コンタミネーション防止策のひとつとして特殊なシートで包み込む技術が有効と考えられました。本技術は、一般の病理検査室においてゲノム医療に広く対応する新しい病理技術となる可能性があります。その新技術のプロトコールを公開します。(プロトコール DOI: dx.doi.org/10.17504/protocols.io.b2fyqbpw)

【概要】
細胞の透過を防止しかつ各種溶媒を通す病理組織検体梱包素材を開発するために、897のシートを対象に、病理組織検体梱包素材に必要な特性を以下の6項目(JAS規格、あるいはISO15189に準じる)を評価しました。1)目開き; 2) 厚さ; 3) 薬品耐性 (キシレン耐性); 4) 透水性(透水係数); 5) 保水性(保水率); 6) 細胞通過試験。最終的に梱包加工して標本作製を行いました。
要件を満たしたシートの素材を用いて袋状にしてカセットを梱包する技術(μSP)を用いて細胞レベルの混入を100 %防止し、核酸の混入を防止しました。なお、梱包の有無によるH & E標本の染色性の差は認められませんでした。






   作業工程における梱包技術の使用例              漏れ出た細胞の通過を梱包材が阻止
 

【μSPの使い方は簡単です・ビデオ紹介】


こちらは、「精密なゲノム医療実現を目指す病理製品の開発」の論文内で紹介している「μSPの使い方」についての動画です。


【μSPのサンプルをご希望の方はこちらから】
病理診断科URL: https://www.kyoundo-hospital.jp/dep/shinryou_byouri/


【論文タイトルと著者】
論文タイトル:A sheet pocket to prevent cross-contamination of formalin-fixed paraffin-embedded block for application in next generation sequencing
著者:Keiichi Iwaya, Hisae Arai, Nanao Takatou, Yuka Morita, Rinko Ozeki, Hirofumi Nakaoka, Masaru Sakamoto, Tsutomu Kouno, Masayoshi Soma
責任著者:岩屋啓一(病理部長)
掲載誌:PLOS ONE
DOI:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0266947
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