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「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)におけるウェアラブル端末を使用した、利用者の体表温および住環境温等の測定とその分析」の実証実験を実施

株式会社Agx
介護施設における体表温測定共同実証実験モニタ期間終了のお知らせと、今後の分析の方向性について

一般社団法人ORINAS(東京都)、株式会社Agx社(東京都)、社会福祉法人敬友会グループホームひまわり(岡山県)、アヴニール・ワークス株式会社(東京都)は4社合同で、高齢者をはじめとした各種介護施設及び災害避難所などにおける要支援者・要配慮者等に対する、新型コロナ感染症やインフルエンザ等の急な発熱や低体温症をはじめとした心身状況の把握や初期対応への連携、環境状況及び日常生活のモニタによる介護負担軽減など目的とした実証実験を行った。 以下それぞれの役割 一般社団法人ORINAS: 社会福祉・介護福祉・地域福祉分野等における学術的分析及び実践援用を担当 株式会社Agx: 実証実験フィールド向けに最適化されたIoTシステム・IoTデバイスを提供 社会福祉法人敬友会グループホームひまわり: 実証実験フィールドの提供および被験者との実験の合意の取り纏めを担当 アヴニール・ワークス株式会社: 実証実験においての運用支援を担当


実証実験の概要について
 社会福祉法人敬友会グループホームひまわり(以下、グループホームひまわり)において、令和4年4月12日~5月13日の期間、利用者に装着された体表温センサー及び、居室等に配置された温湿度センサーからの複数データを、株式会社Agx社の有するBluetoothを用いた独自システム「ThingBridge VISION」(図1)によって、10分間隔・24時間の複数モニタ及びデータ蓄積、タブレット端末等による情報可視化とその利用の実証実験を行った。(注)



図1 Agx社有するデータ可視化システム「ThingBridge VISION」概念図
※ThingBridge VISIONは医療機器ではありません。

 実証実験は、温湿度センサーを居室計3箇所、共有スペース計2箇所の設置を行い、加えて、設置箇所に居住する利用者3名に腕時計様式にて手首によるセンサー装着を行いました。センサー装着は、バンド含め10gと非常に軽量であり、かつ幅2.5cmと日常生活上の負担を極力排除された、違和感等のない作りとなっています。(写真1)
 

写真1 着用の様子(男性:手首幅5cm)

実証実験の結果、期間内における各居室及び共有スペースの温湿度センサー、手首に装着されたセンサーからの10分おきのデータをそれぞれ収集することができました。(図2、図3)

図2 居室内の温湿度データをグラフ化したもの



図3 手首に装着された体表温データをグラフ化したもの

 現在、これらのデータに加えて、グループホームひまわり関係者の皆様のご協力により、基本情報、日常生活上のケア記録、食事量、飲水量、排泄量、バイタルデータ(BP/KT/P/SpO2)、アクティビティ、夜間の睡眠状況ほか、期間内の各種詳細なケアに関する情報を加味し、利用者装着の体表温データとの関係性などの分析を開始した所存です。また、気象庁発表資料による、外気温、湿度、天気、気圧も含め、重層的な分析を行う予定です。また、これらの結果は、学術的な発表等を行う予定であり、関連する専門家、研究者の意見を問うこととしています。

体温リズム可視化の意義について
 ヒトは元来、一日を通した体温の変動リズム(概日リズム:circadian rhythm)があり、その変動には交感神経活動、副交感神経活動の亢進が大きく影響を及ぼしています。しかし何らかの要因により、睡眠覚醒のリズムと体温のリズムの位相がずれてしまうことが起こった場合、うつ病、不安障害の発症、日中の抑うつリスク要因、睡眠障害等への影響が考えられています。
例えば、認知症高齢者に夜間の不眠があり施設内を長時間にわたって歩行している場合、グループホーム等の施設では夜勤職員1人の体制が通常であり、その対応に試行錯誤を行っている現状が存在しています。これらのことから、認知症高齢者の夜間の歩行の現象だけに焦点を絞った服薬等による沈静化を行っていることが珍しくありません。この服薬による沈静化は、日中の覚醒状態に影響を及ぼすこともあり、ふらつきや転倒を誘発し寝たきりの可能性を有してしまうばかりか、日中の傾眠状態により夜間の不眠などの悪循環を招くなど、高齢者の尊厳を阻害されてしまう可能性を引き起こします。
もちろん、グループホームひまわりのように、日中のケアの工夫や心身ともにリラックスして過ごせる快適な住環境の構築、夜間の丁寧な対応などにより、利用者のよりよい生活を目指している施設や職員の方々も多くいらっしゃいます。しかし、社会問題になっている介護職員の人材不足や、要介護高齢者の増加は、現在勤務している職員の重い負担として反映されていることも事実として受け止め、その対策は急務と言えるでしょう。

体温のリズムについてもう少し睡眠との関係性に焦点を当てると、陽の光を浴びたり、規則正しい食生活や食時間、日中の刺激的で多様な活動を行ったりした結果、上昇した体温は夜間にかけ緩やかに下降していき、就寝に備えていきます。そして、睡眠の直前には、末端の手足の皮膚の温度が上がり、体内深部の体温を下げるための放熱が盛んになりますが、乳幼児の眠くなった際に手足にでる現象もこれと同じことです。(図4)逆を返すと、これらの現象がうまく働いていない人びとは、睡眠の障害を生むことに繋がり、不安や活性化などによって、認知症高齢者などは夜間の歩行継続などを招きやすい可能性が存在しています。


図4人の体温リズムのイメージ
(環境省H21年:ヒートアイランド対策の環境影響等に関する調査業務報告書P4図1-5より転載)

このことから、より精緻に体温のリズムが可視化され分析が行われることによって、高齢者のみならず障害者を含め、なかなか自身の状態を言葉にしづらい人びとに対して、日中の生活やケアの見直しなども含めた包括的な支援を行うことを目指すことが可能となるのです。このことは課題の多い沈静化のための服薬に頼らないばかりか、夜間の介護職員の負担軽減にもつながり、利用者の尊厳保持含めて社会的に意義のある視点と言えます。
これらのことから、まずは要介護高齢者などの快適生活を構築するため、また、介護職員への負担軽減のために、要介護高齢者の体温等の生体情報の常時モニタリングから体温の変動のリズムを可視化し、日中の活動の状況、夜間の睡眠状況をはじめとした、先述の各種情報を学術的な視点から包括的な掛け合わせによる分析を行うことといたしました。
 
 一方、新型コロナウィルスやインフルエンザの流行は、人と人との接触を極力避ける手段や、発熱者の隔離などの早期の対応が求められますが、高齢者や障害者施設、とりわけ認知症高齢者や知的障害者の施設等における各種対応には多くの苦慮が伴います。これら感染症の症状の一つである発熱は、自らの状態を主観的、客観的に説明することが困難な人びとに対しては、特に配慮が求められると言えるでしょう。そのため、体表温等を常時モニタリングし、急な上昇(スパイク)や、日常のデータとは異なる数値を示した場合、その状況を介護職員にアラートする機能が求められます。(図5)通知を受け取った介護職員は、専用機器による測定や医療従事者への連絡を行うなどの行動を取り、被害の拡大を防ぐことが容易となると想定されます。本実証実験に用いられたシステムは、得られたデータをタブレット等にて可視化することに加えて、アラート通知を行うなどの機能も付与できることから、各施設の利用者個々に寄り添った良質で、介護者の負担軽減を可能とするケアに結び付くことが期待されています。  

図5 皮膚温度センサーから導き出されたアラートの閾値の例

本システム援用の可能性について
 近年多く発生している風水害や、大きな地震等は、そこに住む人びとを広域で避難の対象者とすることがあります。その広域での避難は、医療従事者へのアクセスを容易にせず、ある程度の現場の対応が求められることとなりますが、その手段には限りがあります。実際、2021年の台風被害によって出された避難指示は、その対象住民がコロナ感染を恐れるがあまり、避難所へのアクセスを忌避させる事態を招きました。また仮に、避難所に入場する際の検温に異常が見られなくても、時間が経過した後の発熱の初期対応、アラートによる対応などにおいて、本システムの援用の可能性が考えられます。避難所においては、ほかに熱中症や低体温症などのリスクも懸念されることから、多人数のモニタを可能としていること、複数個所の環境温湿度のモニタを可能とすること含め、コストもかからず導入できることから、活躍の場として期待が広がっています。

また、現在、厚生労働省は「科学的介護推進体制加算(LIFE)」との名称で、介護関連データベースに基づく、現場情報の収集・分析、現場へのフィードバックを通じて、科学的裏付けに基づく介護の普及・実践をはかっています。(図6)

図6  LIFEを活用したPDCAサイクル(厚生労働省)

 LIFEの実践には科学的なエビデンスに基づく個別化されたデータの蓄積が求められ、ビッグデータ解析により現場へとフィードバックがなされているように、介護の実践現場において、ますますIOT分野等の利用が促進されていくことが考えられます。精緻な利用者データの蓄積やその分析によるケアの質の向上の取組み、介護人材不足による介護負担軽減目的のためのデジタル環境による業務支援などを含め、実践現場を主体に多様なデータをモニタするテクノロジー分野、アカデミア分野の一体的な取り組みが求められています。

本プロジェクトは、これらの事を総合的に鑑み、よりよい社会、なかでも社会的にバルネラブルな状態にある人びとの一助になるべく、各種テクノロジーの社会的援用を目的に共同活動が行われ、その第1段階のモニタ機関を終了したことを、ここにご報告いたします。

文責:ORINAS代表理事 小櫃俊介

(注)本実証実験を開始するにあたり、グループホームひまわりの利用者及びその家族に対し、実証実験の目的やデータの収集方法、プライバシーへの配慮などを文書及び口頭にて家族及び本人へ代理説明、同意書の提出をもって実験への賛同を得たとしました。また、倫理的配慮については、得られたデータは匿名化し個人情報保護士の指示による情報管理の徹底、分析結果等は学術的活動など研究等の目的以外の使用はしないこと、実験の参加は任意性を有し、参加表明後の撤回も可能であること、撤回や不参加についての不利益がないことの約束を行い、合わせて同意を得ました。

参考・転載文献
元村祐黄「<総説>睡眠・概日リズム機構が気分調節に及ぼす影響とその神経基盤」時間生物学Vol.22,No.1(2016)
環境省「ヒートアイランド対策の環境影響等に関する調査業務報告書」(2009)https://www.env.go.jp/air/report/h21-06/index.html 
厚生労働省「科学的介護」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00037.html

■Agx について
株式会社Agxは、デジタル社会に向けて誰もが活用できるIoTプラットフォームの提供を事業ミッションとして、IoTに必要なハードウェア・クラウド・データベース・アプリケーションをトータルで提供する企業です。

■ThingBridge VISIONについて
「ThingBridge VISION」は種々のIoTセンサーデバイスと、IoTデータ収集クラウド基盤、そしてデータ可視化用ウェブシステムなどIoTシステムに必要なすべてのコンポーネントをパッケージ化したソリューションです。お客様の様々なご要求に応えることが可能な拡張性を有するシステムです。
※ThingBridge VISIONを活用した熱中症対策IoTシステム https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000038068.html

■問い合わせ先
【ホームページ】
https://agx.jp/
https://thingbridge.jp/vision/
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