医療・医薬・福祉

光免疫療法の新規標的分子を確認(関西医科大学)

学校法人関西医科大学
2つのトリプルネガティブ乳がんの腫瘍モデルにおいて確認。将来的に多くのがんに適応できる可能性、また超早期の病理学診断を行うことが可能に。

学校法人関西医科大学(大阪府枚方市 理事長・山下敏夫、学長・友田幸一)附属光免疫医学研究所小林久隆所長・特別教授が、光免疫療法の新規標的分子として、主要な細胞接着分子の1つであるICAM1※1がこの治療の非常に有望な標的分子であることを、2つのトリプルネガティブ乳がんの腫瘍モデルにおいて米国国立衛生研究所(NIH)との共同研究で確認しました。複数ある乳がんのタイプのうち、乳がん全体の約20%を占めるトリプルネガティブ乳がんは、再発率が高く再発後の生存期間が他のタイプの乳がんに比べ短いことが知られています。しかし乳がんで一般的に用いられるホルモン療法やハーセプチン療法などの効果がなく、治療の選択肢が少ないのが現状です。今回、光免疫療法における病理組織学的変化を超早期(2時間以内)のタイミングで観察し、これまでに教科書等では記載のなかった病理学的所見と免疫組織病理学的な所見を発見しました。将来的に多くのがんに適応できる治療法であるとともに、この新たな病理所見は現在行われている臨床の頭頸部がん治療においても光免疫治療の効果を判定する超早期の病理学診断を行うことを可能にする画期的な仕事です。


 <本研究の概要>
この研究では、MDAMB468-lucとMDAMBm231というトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の2つの細胞株をマウスの皮下に移植し、光免疫療法の新規標的分子としての有用性を調べました。
試験管内で、トリプルネガティブ乳がん由来の細胞に近赤外線光を照射したところ、容量依存的に細胞に損傷が起きることを確認。また、生体内でICAM-1をターゲットに近赤外線光を照射したところ、細胞質の空胞形成などが起き、がん細胞に損傷が与えられていることが確認できました。形態的には損傷がないように見えたがん細胞にでさえ、治療後2時間以内にアクチン細胞骨格※2の異常な分布と、Ki-67※3陽性の著明な減少が認められました。これはつまり、ICAM-1をターゲットとした近赤外線光照射により、がん細胞がダメージを受け増殖が抑制されたことを意味します。

<本研究の意義・今後の展開>
今回確認された近赤外線光の照射によるがん細胞の病理学的な損傷は、腫瘍の拡大を抑制し、腫瘍移植マウスの生存を改善しました。この研究は、ICAM-1を標的とした光免疫療法を、将来トリプルネガティブ乳がんに臨床応用できる可能性を示唆しています。

<光免疫療法と本研究の背景>
現在、がんに対する治療法としてはがん細胞を切り取って治す“手術療法”、がん細胞を攻撃する薬剤を用いる“化学療法”、放射線を照射してがん細胞を攻撃する“放射線療法”、免疫機能を強化したり仕組みを変化させてがん細胞を攻撃する“免疫療法”の4つが主流です。しかし、どの治療法においても正常な細胞を攻撃して破壊するリスクがつきまとい、がん患者さんの治療では吐き気や嘔吐、脱毛、味覚障害など、様々な副作用を生じるのが現状です。しかし、そうしたがん治療の問題点を一気にクリアする、正常な細胞にはほとんど影響を与えずにがん細胞だけを選択的に破壊する全く新しいがん治療戦略が登場しました。それが、光免疫療法です。
小林久隆特別教授が開発したこの手法は、がん細胞に多く吸着する薬剤を投与し、人体にほとんど影響を与えない近赤外光を照射すれば、がん細胞に取り付いた薬剤が化学変化を起こして物理的にがん細胞を破壊する、という仕組みでがんを治療します。

日本においては、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に対する治療として2020年9月に承認され、現在は保険診療として治療を受けることが可能です。
光免疫療法用の薬は、がん細胞の表面に多く出ている目印(抗原)にくっつくタンパク質(抗体)に、光に反応する物質をつけたものです。この薬を点滴投与すると徐々にがんに集まっていき、1日くらいでがん細胞に多くの薬がくっつきます。そこにレーザー光を当てると薬が反応し、薬がたくさんくっついたがん細胞は破裂して死滅します。一方で正常細胞は、光免疫療法用の薬がほとんどくっつかないため、レーザー光を当ててもダメージを受けません。また光免疫療法用の薬自体は細胞にダメージを与えませんし、使用するレーザー光も人体に害は及ぼさないので、抗がん剤のような治療部位以外での副作用はなく、患者さんにやさしいがん治療法といえます。
上述のように、がん細胞には、特定的な抗原が発現しており、この抗原ががん細胞の増殖や転移にかかわるものであれば分子標的治療薬のターゲットとなりえます。光免疫療法の場合にはこの抗原に生物学的な機能がなくとも存在すれば治療の標的として機能することが大きな利点です。

今回の研究では、トリプルネガティブ乳がんにおいて、ICAM-1が光免疫療法の新規標的分子となりえることを確認しました。臨床応用にいたれば、急激な増殖と転移が多く、現時点では効果的な治療の選択肢が少ないトリプルネガティブ乳がんに対する新たな治療の選択肢となることが期待されます。

本研究の論文「Intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)-targeted near-infrared photoimmunotherapy in the treatment of triple-negative breast cancer.」は「Cancer Science(インパクトファクター:6.716)に2022年6月20日(月)付で掲載されました。

■書誌情報




<用語解説>
1.ICAM-1
細胞間接着分子。トリプルネガティブ乳がんのバイオマーカー。ヒトTNBC細胞株および組織で過剰発現することが知られている。

2.アクチン細胞骨格
アクチンは、筋肉を構成する主要なたんぱく質の一種。細胞骨格とは細胞の形を保持し、また変化させる細胞内の要素。

3.Ki-67
細胞周期に関連するたんぱく質の一種で、休止期を除くすべての細胞核に発現するため、細胞増殖マーカーとして利用されている。

<本件研究に関するお問合せ>
学校法人 関西医科大学 光免疫医学研究所
〒573-1010 大阪府枚方市新町2-5-1
E-mail:nir-pit@hirakata.kmu.ac.jp

<本件取材についてのお問合せ>
学校法人 関西医科大学 広報戦略室(佐脇、両角)
〒573-1010 大阪府枚方市新町2-5-1
メール:kmuinfo@hirakata.kmu.ac.jp
電話:072-804-2128 ファクス:072-804-2638
https://www.kmu.ac.jp/

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