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心臓サルコイドーシスの心イベント関連因子が明らかに

学校法人 順天堂
~世界最大の国内多施設レジストリからの報告~

順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 末永 祐哉 准教授、北里大学医学部 循環器内科学 鍋田 健 助教、国立循環器病研究センター 心臓血管内科 北井 豪 医長らの研究グループは、心臓サルコイドーシス患者に関する世界最大規模の多施設レジストリデータを構築、解析し、その臨床像、心イベント発生率、及び心イベントとの関連因子を明らかにしました。本研究では、現在の診断基準に基づいて診断された心臓サルコイドーシス512例を後ろ向きに検証し、心臓サルコイドーシスにおいて1.心イベント、特に心室性不整脈がこれまで考えられていたよりも多く発生していること、そして2.診断時の脳性ナトリウム利尿ペプチド(注1)値が高いこと、左室駆出率(注2)が低いこと、心室性不整脈(注3)の既往、診断後に心室頻拍に対するアブレーション治療(注4)が必要となることの4つの因子が心イベントと関連することが示されました。 本論文はEuropean Heart Journal誌のオンライン版に2022年7月4日付で公開されました。


研究成果のポイント


世界最大規模の登録症例数を用いて心臓サルコイドーシスの臨床像を明らかにした。
心イベントは経過中に高頻度に生じ、特に不整脈イベントがその多くを占めた。
多変量解析を用いて心イベントに独立して関連する因子を示した。


背景
サルコイドーシスは体内の複数の臓器に生じる原因不明の炎症が起こり、その炎症を起こした細胞が肉芽腫と呼ばれる塊をつくる病気とされています。この肉芽腫が心臓にできた場合を心臓サルコイドーシスと呼び【図1】、心不全や致死性の不整脈といった心臓の症状を引き起こすことが知られていますが、比較的稀な疾患であることからこれまでの報告は国内外併せても小規模のものしかなく、実際の心臓サルコイドーシス患者の実態は明らかではありませんでした。そこで本研究では国内で心臓サルコイドーシスの患者さんの治療にあたる33の施設が協力し、現在の診断基準に基づいて診断された心臓サルコイドーシス症例の患者さんの特性やその経過に関するデータを集約、解析することにより、これまでその実態がほぼ不明であった心臓サルコイドーシス患者の臨床像や予後、さらには心イベントとの関連因子を調査することを目的としました。
【図1】心臓サルコイドーシスでは心臓に炎症が起こり、肉芽腫を形成します。 このため心臓の機能が障害を受け、心不全や不整脈を引き起こします。
内容
国内の参加施設から心臓サルコイドーシス患者512例のデータが本研究に登録されました。これは、現時点で心臓サルコイドーシスを登録した研究では世界最大規模になります。患者は平均年齢が62歳、36%が男性であり、診断のきっかけとして最も多かったものは心臓超音波検査での異常所見でした。心臓MRI(注5)やFDG-PET(注6)の結果からは心室中隔基部及び中部が心臓サルコイドーシスの好発部位である可能性が示されました。診断後の経過は、全死亡、致死性不整脈(心室細動・持続性心室頻拍・植え込み型除細動器(注7)の適正作動)、心不全入院で構成される「複合心イベント」が5年で31.0%、10年で48.1%と高頻度で発生していることが明らかになりました。特に、致死性不整脈は他のイベントの約2倍の頻度で発生しており、心臓サルコイドーシス治療において致死性不整脈への対応が重要であることが示されました。また、多変量解析の結果では、診断時の脳性ナトリウム利尿ペプチド高値、左室駆出率低値、心室細動・持続性心室頻拍の既往、そして診断後の心室性不整脈に対するアブレーション治療が行われたことが心イベントの独立した関連因子として示されました【図2】。
【図2】心臓サルコイドーシスにおける各イベントの発生率と予測因子
今後の展開
本研究により、現状の心臓サルコイドーシスの臨床像、予後、そして心イベント関連因子が明らかとなりました。今後は様々な角度からさらなる解析を行うと同時に、本研究成果を元に心臓サルコイドーシス患者に対するより良い診断、治療の開発へとつなげていく予定です。

論文情報
掲載誌:European Heart Journal
論文名:Risk stratification of patients with cardiac sarcoidosis: the ILLUMINATE-CS registry
著者:Takeru Nabeta, Takeshi Kitai, Yoshihisa Naruse, Tatsunori Taniguchi, Kenji Yoshioka, Hidekazu Tanaka, Takahiro Okumura, Shuntaro Sato, Yuichi Baba, Keisuke Kida, Yodo Tamaki, Shingo Matsumoto, Yuya Matsue
DOI:10.1093/eurheartj/ehac323

用語解説
1. 脳性ナトリウム利尿ペプチド:心臓に負荷がかかると分泌されるホルモン。心臓にかかっている負荷を知る指標として用いられている。
2. 左室駆出率:心臓の動きの良さを示す指標の一つであり、心臓の収縮性を示したもの。50%以上が正常とされる。
3. 心室性不整脈:心室から生じる不整脈全般のこと。心室頻拍や心室細動はこの一種で、心停止の原因となる重篤な不整脈(致死性不整脈)である。
4. アブレーション治療:心臓内にカテーテルという細い管を通し、不整脈の原因となっている部分を焼灼する治療法。
5. 心臓MRI:磁石と電磁波を利用して体内の状態を画像化するMRIを心臓に行ったもの。軽い負担で正確な心臓の機能や障害度を調べることができる。
6. FDG-PET:放射線物質を含む薬剤を体内に投与し、体内の様々な機能を評価する検査。サルコイドーシスでは炎症が生じている部分をFDG-PETで評価することができる。
7. 植え込み型除細動器:前述の致死性不整脈が出現した際に、自動的に不整脈を感知して電気ショックなどの治療を行う体内に植え込む小型の機械。
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