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【イベントレポート】9/13開催Webシンポジウム「感染症対応シティー:未来の姿は?」

独立行政法人国立病院機構九州医療センター
次のパンデミックに備える 非常事態に強い都市、医療・介護施設とは?

独立行政法人 国立病院機構 九州医療センター(所在地:福岡市中央区地行浜1丁目8番地1号、院長:森田茂樹 もりた・しげき、以下「同センター」)は、2022年9月13日にWebシンポジウム「感染症対応シティー:未来の姿は?」を開催しました。 同シンポジウムは、福岡市役所や内藤建築事務所の担当者を交えて、「感染症対策」にとどまらない多角的な視点で「都市計画の未来」について議論する場となりました。そのレポートをお届けします。





◆Webシンポジウム「感染症対応シティー:未来の姿は?」とは

・開催日時:2022年9月13日(火) 17:30~(オンライン形式)
・対象者:医療・介護施設の将来計画に関与する職員、パンデミック・災害に関与する行政担当者

<目的>
新型コロナウイルスのパンデミック出口戦略が議論される段階になってきており、今までの対応を総括した次のパンデミックへの備えが求められています。中期的な対応を模索するなかで、パンデミックや災害に強い医療施設・介護施設はどうあるべきか、またどのような街づくりが非常事態で求められるのか、建設や都市計画という視点から議論を深めることを目的としました。

<プログラム>
開会の挨拶 高島宗一郎(福岡市 市長)
1.医療施設や介護・福祉施設の未来
1.臨時医療施設はいかに建設され機能したか? 岡田千春(国立病院機構本部 審議役)
2.近未来の病院のデザインはどうあるべきか? 藤田昌樹(福岡大学病院 副病院長)
3.介護・福祉施設に必要とされる対応は? 衣笠有紀(福岡市保険医療局健康医療部 部長)
2.感染・災害につよい施設や街を作るには?
4.医療・介護施設を設計するには何が重要か? 川崎邦生(内藤建築事務所 東京本社 企画部)
3.感染症対応シティーのコンセプト
5.感染症に強い国際都市を目指して 吉田宏幸(福岡市経済観光文化局 理事)
4.総合討論 討論者:講演者および荒瀬泰子(福岡市 副市長)
閉会の挨拶 森田茂樹(同センター 院長)

◆シンポジウム開催の背景

九州医療センターが主催する新型コロナウイルスに関するWebシンポジウム。第1回は各医療現場の対応状況を共有する「福岡地区での新型コロナウイルス対応のアップデート(https://infection.hosp.go.jp/event/event6.html)」、第2回はG-MIS を含めた全国レベルのデータ共有の方向性について議論する「G-MISと現場の調整機能をどうつなぐか?(https://infection.hosp.go.jp/info/info3.html)」、第3回目となる今回は福岡市と共催し今後の病院建設や都市計画について討論する「感染症対応シティー:未来の姿は?」をテーマに行いました。パンデミックに対し、現場の経験から未来に対する議論まで、包括的に発展するシンポジウムとなっています。

第3回が都市計画まで見据えたテーマとなったのは、今回のCOVID19のようなパンデミックに対応するためには、医療機能と都市機能の連携が重要であるからです。例えば重症な人ほど物理的に医療施設に運ぶ必要があり、さらに時間短縮が重要です。個々の病院の設計だけでなく都市全体のトータルデザインが必要であることをふまえ、都市計画や医療について様々な視点を持った専門家と議論する場を企画しました。

◆シンポジウムの内容

1.臨時医療施設はいかに建設され機能したか?(国立病院機構本部 審議役 岡田千春)
国立病院機構東京病院は、2022年3月10日からコロナ専門の臨時施設の運用を開始しました。
実際の施設の図面
▼臨時施設のメリット


ハード面:陰圧・陽圧等のゾーニングが容易。
ソフト面:専門病院化施設で起こりがちな、医師や看護師の離職が起こらない。


▼臨時施設のデメリット

ハード面:維持期間が不透明だが、仮設のため建築後も改修が繰り返し必要。装備のトラブルも発生。
ソフト面:派遣医師、看護師の一定レベルの機能を長期間維持することが極めて困難。(半年が限度)


短期的であれば、災害対応として臨時医療施設は有用。しかし、長期的には通常の医療対応体制を整えることがやはり必須。そのために、耐えられる「短期」が半年なのか?1年なのか?など、今回のことを踏まえて、今後さらに議論が必要です。

2.近未来の病院のデザインはどうあるべきか?(福岡大学病院 副病院長 藤田昌樹)
福岡大学病院では、今回のパンデミック時に、既存の病棟をコロナ専門病棟へ転換。しかし、急場対応であるため、ゾーニングや陰圧・陽圧の設定等が困難。このような現状を受けて、コロナ禍以前から計画のあった新病院の建設に向け、パンデミック対応も鑑みた設計を進めています。(2024年春オープン予定)


病棟全体の配置、通常時のための各病棟最低2つの陰圧室(専用エレベーターから直接入室)に加え、パンデミック時には呼吸器内科を専門病棟へ転換する前提でフロアを設計。

3.介護・福祉施設に必要とされる対応は?(福岡市保険医療局健康医療部 部長 衣笠有紀)
第7波において、福岡市のハイリスク施設(医療機関・高齢者施設・障がい者施設)でのクラスター合計200件のうち、高齢者施設での発生は127件であり半数以上を占めます。高齢者は、インフルエンザなども含め感染症の重症リスクが高いため、介護施設の対策強化は急務です。


今回のパンデミックを受け、問題点や感染症対応に必要な点が明らかになりました(上記参照)。しかし、あくまで介護施設は「生活の場」であるため、通常時の必要機能とのバランスは議論が必要です。

4.医療・介護施設を設計するには何が重要か?(内藤建築事務所 東京本社 企画部 川崎邦夫)
今回のパンデミックに対応するため、全国で24の仮設病棟や、大阪では大規模な療養センターが設営されました。




川崎氏が実際に複数件の建設に関わった経験と、それぞれの施設を比較すると、感染症病棟建設には下記のような段階が必要です。
▼次期感染症に備える施設のあり方

当該病院が対象とする感染症を明確化
当該病院が対象とする範囲を明確化(院内感染防止、擬似症患者の受け入れ、確定患者の症状別対応など)
ゾーニング(ゾーンを明確に区分し、医療従事者と物品の動線を一方通行とする)
段階的なエアフローを作る
感染患者数の段階的な増加に備える
感染症対策のまとめ表をもとに計画する(接触感染、飛沫感染など各感染経路に対する対策)

また、次のパンデミックに備えて、感染症病棟に関して川崎氏から下記のような提案がなされました。


仮設ではなく本設で対応できるように設計すること(仮設でも相当の時間と費用がかかるうえに、機能に限界があるため)
補助金などの財源を確保すること
平時は、自由な使い方ができること(保険診療はしないが、災害備蓄や学生実習、院内改修時の仮移転など)


5.感染症に強い国際都市を目指して (福岡市経済観光文化局 理事 吉田宏幸)
コロナ対策を考える上で、経済活動とのバランスは常に議論されてきました。この2つを両立していくため、福岡市は「感染症対応シティ」というコンセプトを打ち出しています。

福岡市では、中心部の老朽化が進んだビルの建て替えプロジェクトが複数進んでおり(天神ビッグバン、博多コネクティッド)今後はオフィスの価値が再定義されていきます。コロナ禍でオンラインの普及が進んだ一方、人が集まることの価値も再認識されました。このような観点から、オフィスをより魅力的な環境に整えることが必要であり、感染症対策もその一つです。福岡の特区制度による規制緩和を活用し、基準値以上の換気能力や非接触で操作できるテクノロジーなどを活用した建築計画には容積率を追加するという市独自のインセンティブを付与することで、感染症対策を推進しています。




総合討論 (講演者および福岡市 副市長 荒瀬泰子)

今回のパンデミックを受け、森田院長の考察する非常時に求められる医療・介護施設の要件(下記参照) が提示されました。
▼将来の非常時(感染・大災害)に求められる医療・介護施設の要件

固執率を高める(医療施設)
感染のゾーニングを考えた設計(医療・介護施設)
「入れない・広めない・つぶさない」の原則の理解(特に介護施設)
ホールディングエリアの確保(医療施設)
・救急外来、病院ロビー、駐車場、隣接するオープンスペース
クラスターを自施設で療養できるハードとソフト(介護施設)
都市計画で効率的な医療施設の配置や役割分担を促す施策(感染症対応シティー)


これに対し、介護施設に関連する福岡市の取り組みについて、荒瀬氏から説明がなされました。

まず、3.の「入れない」ために、福岡市の全高齢者施設に、抗原検査キットやマスクの配布を行っています。

次に、5.の療養環境を整えるために、福岡市医師会と連携してシステムを構築中です。高齢者施設では医療は行えず、現状では感染症での看取りもできないため、発症すると救急病院に運ばざるをえません。
しかし、施設単位での入院は人数が多く、療養期間も長びく傾向にあるため、救急病院が逼迫する事態が起きやすくなります。そのため、適切な時期に速やかに転院または施設に戻れる制度を調整中です。また、今後は「居住空間」である高齢者施設にどのように医療を入れていくのか、医療関係者も含め協議を進めています。

第6波~第7波にかけて、介護施設からの高齢者入院が増加し病院が逼迫する事態がありましたが、上記のようなシステムが動き出したことで大部分が実際に解消されています。

さらに、そのように多くの患者が同時期に訪れた際に、システム以外にもバッファーとして機能する4.のような物理的なエリア確保も重要であること。ロビー等での対応が一般的ですが、今回のようなパンデミック対応として、駐車場の活用や、近隣にオープンスペース(公園等)の設計も視野に入れるべきこと(緊急時にはヘリポートとしても活用可能)。6.の医療施設の配置や既存医療施設を有機的につなぐ施策なども含め、都市計画規模での対応が必要であることなどが議論されました。

この他にも、非常時の運営方針や人員体制についてや、今後の感染症に対応する病院作りの建築要素と経営の両立など、講演者への質疑応答も交えて議論が進みました。

コロナウイルスが収束した後も、感染症に限らずどのような事態が起こるか予測はできません。そのような事態に対応するには、都市設計や施設計画にも柔軟性が必要です。ある程度の冗長性がなければ、非常時のさまざまな状況には対応できないことが、今回のパンデミックによって明確になりました。効率性を追求するだけでなく、その冗長性をどのように確保するかが今後の課題と言えます。そのために、今後も多くの知見や現場の経験を交えて議論を深める機会を持ち続けることが重要でしょう。

◆登壇者プロフィール

岡田千春

国立病院機構本部 審議役
国立病院機構 東京病院の臨時施設の立ち上げ、維持管理の責任者。感染拡大時の臨時施設についての計画や運営の実務経験を共有。

藤田昌樹
福岡大学病院 副委員長
コロナ禍での福岡大学病院建て替えを経験(現在建設中)。感染症対策を踏まえた大病院の設計について講演。

衣笠有紀
福岡市保健医療局健康医療部 部長
介護施設の感染やクラスターを管轄、指導。医療だけでなく、介護に関する造詣が深い。

川崎邦生
内藤建築事務所 東京本社 企画部
医療施設、特に仮設医療施設の建築の経験が複数あるなど、コロナ禍の建築企画において豊富な経験を持っている。

吉田宏幸
福岡市経済観光文化局 理事
福岡市中心部の再開発プロジェクトに複数携わる。パンデミック対策と経済活動の両立を目指した都市計画を推進している。

荒瀬泰子
福岡市 副市長
医学部卒業後、福岡市にて保健福祉局理事などを歴任。市政と医療、保険福祉の横断的な知見がある。

【センター概要】
名称  :国立病院機構 九州医療センター
院長  :森田茂樹
所在地 :福岡市中央区地行浜1丁目8番地1号
設立  :1994年7月
機能  :診療、研究、研修
病床数 :702床(一般650床・精神50床・感染症2床)
職員数 :1,353名
電話番号:092-852-0700(代表)HP   :http://www.kyumed.jp/index.html
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