医療・医薬・福祉 教育・資格・人材

世界初!花粉症研究用スマホアプリ「アレルサーチ(R)️」に患者・市民参画を取り入れた研究を実施

学校法人 順天堂
~患者・市民の声を採り入れたアプリ研究を実現~

順天堂大学医学部眼科学講座の藤尾謙太大学院生、猪俣武範准教授らの研究グループは、2018年2月より公開している花粉症研究のためのiOS, Androidアプリケーション「アレルサーチ(R)️」に花粉症の当事者や家族の視点を導入しながら進める「患者・市民参画」(Patient and Public Involvement)を取り入れ、研究開発から研究成果の公表まで一貫した研究を実施することで、多角的な視点の導入と双方向性研究実現に向けた基盤を構築しました。この取り組みはResearch Involvement and Engagement (2022年9月2日付) に発表されました。


<本取り組みのポイント>


2020年2月から2022年3月の間に合計4名の患者・市民委員と協働し、花粉症研究用アプリケーション「アレルサーチ(R)️」を用いた研究に関する意見交換会を合計9回実施した。
意見交換会の結果、アレルサーチの質問項目のうち合計93項目を修正・追加し、2020年8月に患者・市民委員の声を取り入れた花粉症研究用スマホアプリのiOS版のアップデートとAndroid版の新規リリースを行った。
一貫した患者・市民参画の取り組み事例を研究コミュニティーへ共有することで将来のアプリを用いた研究の効果的な推進と双方向性の研究の実現へ貢献できる可能性がある。


<背景>
患者・市民参画とは、患者・市民が研究者とパートナーシップを結びながら、研究の計画、デザイン、管理、評価、結果の普及に関わることです。疾患とともに生きる経験や、納税者としての意見、研究成果の最終的な受益者としての声を聞くことで、研究におけるアンメットメディカルニーズ(いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)の探索や多角的な視点の導入につながり、よりよい形での研究の実施が期待できます。

花粉症は本邦で約3,000万人と罹患する人が最も多い免疫アレルギー疾患であり、今後も増加が予想されます。さらに、花粉症は医療機関への受診が最も多い疾患の一つであり、医療費増加にも影響を与えています。花粉症の症状による生活の質の低下 (Quality of Life : QoL) や、アブセンティーイズム (病気欠勤) やプレゼンティーイズム (疾病就業) は労働生産性に大きく影響を与え、経済的損失を起こします。花粉症の病態理解と診療の質の向上には、花粉症に関する多角的な視点の導入と包括的な解析により、個々人にとって最適化された花粉症対策を提案する必要があります。

研究グループは花粉症研究において多角的な視点を取り入れつつ包括的なデータを収集することを目的として、患者・市民参画を取り入れた花粉症研究用スマートフォンアプリケーションを用いた双方向性研究を開始しました。アレルサーチ(R)は花粉症の自覚症状アンケート、QoLアンケート、目の充血測定を実施することで、研究参加者の花粉症レベルを計測できます(図1)。本研究では、患者・市民参画の実施による花粉症研究用スマホアプリへ多角的な視点の導入と双方向性研究実現に向けた基盤を構築いたしました。
図1
<本取り組みで実施した内容>
【1】一貫した患者・市民参画の実施
ホームページやSNSで花粉症患者もしくは患者家族の公募を実施し(図2)、男性1名、女性3名の計4名を患者・市民委員として採用し、2020年2月から2022年3月の間に合計9回に渡って患者・市民委員と意見交換会を行いました。その中では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) が2019年に刊行した『患者・市民参画ガイドブック ~患者と研究者の協働を目指す第一歩として~』(図3) の研究段階における8つのステップを参考に話し合いを進めていきました。具体的には、花粉症研究用スマホアプリの使いやすさ、説明・同意文章のわかりやすさ、花粉症調査項目の選定やその分量等について対話を行なうとともに、研究者と患者・市民委員の協議の仕方について恒常的に協議しながら、患者・市民参画の実践に取り組みました。
図2
図3
【2】患者・市民の意見を取り入れたiOS版アレルサーチ(R)のアップデートならびにAndroid版の新規リリース
合計9回に渡って患者・市民委員と意見交換会を行い、研究計画やスマホアプリの調査項目を評価していただき、いただいた意見を研究者チームで協議して、採用する意見を決めました。意見交換会の結果、研究計画やスマホアプリの調査項目の追加・変更は93項目となりました。その結果、アレルサーチ(R)の調査項目数は97項目から165項目と増加しました。2020年8月に患者・市民参画を取り入れた花粉症研究用スマホアプリのiOS版のアップデートとAndroid版の新規リリースを行いました。そのプレスリリースの際には、意見交換会において内容や妥当性を検討し、よりわかりやすく誤解を生まない形で公表を行いました。

【3】双方向性研究の実現に向けた基盤構築
花粉症研究用スマホアプリで収集したデータをホームページ上に表示するフィードバックシステム「アレルサーチで分かったみんなの花粉症情報」を2020年3月26日に開発・公開しました(図4)。本システムでは、1週間毎に研究参加者数、新規ユーザー数、アクティブユーザー数や、研究参加者の自覚症状を地図上に表示する「みんなの花粉症マップ」、都道府県別の花粉症レベルを表示する「みんなの花粉症ランキング」、マスクや内服等の花粉症予防行動を表示する「みんなの予防行動」 を確認することができます。
図4
【4】海外雑誌での公表
「アレルサーチ(R)️」に患者市民の知見を取り入れた本研究の成果が海外雑誌「Research Involvement and Engagement」に掲載されました。(図5) (https://researchinvolvement.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40900-022-00382-6)
本研究は患者・市民の知見を取り入れたアプリの研究として世界で初めての発表となります。
本雑誌は、患者・市民の方が編集部や査読に直接関わっていることが特徴です。
図5
<今後の展望>
これまでの研究で、患者・市民の意見を取り入れた花粉症研究用スマホアプリのアップデートとウェブサイトの連動による双方向性医療実現に向けた基盤構築を行いました。従来の研究方法では、明らかになった知見を迅速に患者・市民に届けることが難しいことが課題でした。しかし、スマホアプリやウェブサイトを使うことで、研究で明らかになった知見をリアルタイムに患者・市民に還元することが可能となりました。このような双方向性医療実現に向けた基盤は、衣食住を含む花粉症に関連した生活習慣の管理について、適切な情報がより迅速に患者・市民に伝わる情報網としてさらなる利活用が期待されます。

<研究の限界>
本研究では、4名の患者・市民委員とアプリ研究における患者・市民の研究参画を導入した。患者・市民(PPI)ガイドブック(図3)には必要な患者・市民委員の数は明言されていないが、多様性の確保やバイアスの軽減のためにさらに多くの患者・市民委員の参加の検討が必要である。

<研究代表者コメント(順天堂大学医学部眼科学講座 准教授 猪俣 武範)>
花粉症は日本で約3,000万人が罹患する最も多いアレルギー疾患で、発症すると日常生活のQoLが低下するだけでなく、仕事や学業の生産性低下にも影響し、社会コストを増加させると言われています。また、花粉症は、患者・市民の生活環境・習慣に密接に関わる疾患であるため、患者・市民参画による多角的な視点を取り入れた花粉症研究が必要です。本研究では、患者・市民委員に花粉症用スマホアプリ研究の一員として主体的に関わっていただくことで、多様な視点を取り入れ、研究結果を迅速に還元することによる双方向性の研究推進の基盤形成を行いました。
本研究における患者・市民にとって使いやすいスマホアプリの開発と、段階別の目標に応じての一貫した患者・市民参画の取り組みは、非常に先進的であり、様々なアプリを用いた研究の効果的な推進と双方性研究の実現に貢献します。スマホアプリを用いた研究は、患者・市民の日常生活圏から継続的に健康・ライフスタイルに関するデータの収集が可能になるとともに、迅速な介入や管理に適し、個々人の疾患に対して最適化された複合的な対策を提案し、疾患の発症・重症化を未然に防ぐ予測・予防医療や個別化医療が可能となります。
これにより保険診療である「花粉症」を「セルフメディケーション(自己管理)」にシフトさせることで、医療費削減にも大きく貢献できることを期待しています。

<原著論文>
本研究はResearch Involvement and Engagement 誌に掲載(2022年9月2日付)されました。
タイトル: 「 Patient and public involvement in mobile health-based research for hay fever: a qualitative study of patient and public involvement implementation process」
タイトル(日本語訳) :患者・市民参画を取り入れた花粉症用スマートフォンアプリケーション“アレルサーチ”による双方向性研究実現に向けた基盤研究
著者: Kenta Fujio1, Takenori Inomata1, Kumiko Fujisawa2, Jaemyoung Sung1, Masahiro Nakamura2, Masao Iwagami3, Kaori Muto2, Nobuyuki Ebihara1, Masahiro Nakamura1, Mitsuhiro Okano4, Yasutsugu Akasaki1, Yuichi Okumura1, Takuma Ide1, Shuko Nojiri1, Masashi Nagao1, Keiichi Fujimoto1, Kunihiko Hirosawa1, Akira Murakami1
著者(日本語表記): 藤尾謙太1、猪俣武範1、藤澤空見子2、Sung Jaemyoung 1、中村正裕2、岩上将夫3、武藤香織2、海老原伸行1、中村真浩1、岡野光博4、赤崎安序1、奥村雄一1、井出拓磨1、野尻宗子1、長尾雅史1、藤本啓一1、廣澤邦彦1、村上晶1
著者所属: 順天堂大学1、東京大学2、筑波大学3、国際医療福祉大学4
掲載誌: Research Involvement and Engagement
掲載論文のリンク先:https://researchinvolvement.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40900-022-00382-6
DOI : 10.1186/s40900-022-00382-6

<協賛ならびに研究助成金>
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業「患者・市民参画によるスマートフォンアプリケーションを用いた花粉症の自覚症状の見える化と重症化因子解明のための基盤研究」、順天堂大学2019・2021年度環境医学研究所プロジェクト研究、平成31年度公益財団法人一般用医薬品セルフメディケーション振興財団による研究助成を受けました。また、株式会社シード、アルコンファーマ株式会社、ロート製薬株式会社の助成を受け実施されました。しかし、研究および解析は研究者が独立して実施しており、助成元が本研究結果に影響を及ぼすことはありません。本研究にご協力いただいた参加者の皆様に深謝いたします。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ
本コーナーの内容に関するお問い合わせ、または掲載についてのお問い合わせは株式会社 PR TIMES ()までご連絡ください。製品、サービスなどに関するお問い合わせは、それぞれの発表企業・団体にご連絡ください。

関連記事(PRTIMES)