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地中海:イタリア当局、生存者の下船を違法に遅延

国境なき医師団
10月下旬から11月上旬にかけての13日間、国境なき医師団(MSF)の捜索救助船「ジオ・バレンツ号」に救助された生存者が、イタリア当局によって安全な場所への下船を阻まれるという事態が発生した。11月8日に最終的に全員が安全な場所に上陸できたものの、当局は最初357人の下船のみを許可し、215人は許可しなかった。 生存者はリビアで受けた暴力と苦痛から逃れ地中海を渡ってきた人びとであり、下船の許可が下りなかった後、強い腹痛や、不安の兆候が現れ、パニック発作を起こした者もいた。MSFはイタリア当局が行った、下船できる人を健康状態によって選別し、一部の人の下船を遅らせる措置は、国際海事法違反であり、非人道的で容認できないと批判している。


下船の許可が出るまで船の上で生活をする人びと。このような状況下で何日も過ごすことは、肉体的・精神的な状態を悪化させる=2022年10月30日 (C) Candida Lobes/MSF



イタリア当局による違法な措置


「国際海事法によれば、海上で救助された生存者は正当な時間内に安全な場所で下船させなければなりません。関連する法律や指針は、安全な場所で下船する前提条件として、病状やその他の理由を挙げていません。責任ある沿岸国として、救助船内の状況や医療ニーズなどを考慮し、あらゆる措置を講じて生存者が救助船にとどまる時間を最短にすべきです」と、MSFの捜索救助活動責任者であるフアン・マティアス・ギルは説明する。

「生存者の多くは、出身国やリビア、あるいは旅の途中で受けた暴力や虐待による心身の傷を抱えたままです。待機期間を引き延ばされたため、感情・心理面でさらに強い苦痛が生じ、不眠、不安といった症状の訴えが日増しに増えていきました。彼らからなぜ下船できないのかと聞かれても、私たちは答えようがありませんでした」とジオ・バレンツ号のMSF医療チームリーダー、ステファニー・ホフステッターは話す。


限界を迎えた船上の生活──ユスフさんの証言


シリア出身のユスフさん(仮名)は、長期の船内待機を余儀なくされた214人のうちの1人であった。11月7日午後、ユスフさんは他の2人の生存者とともに、港に停泊する船の上から波止場に向けて海に飛び込んだ。1人は結局船に戻ったが、ユスフさんとアハメドさん(仮名)の2人は、波止場で一夜を過ごし、飲食を拒否してイタリア当局の決定を待った。その後アハメドさんは、高熱と脱水症状が出たため、医療施設に搬送された。

「救助船の上で何日も過ごし、私は正気を失いつつありました。自分の体と夢がバラバラになるように感じたのです。船上でしてもらえたこと全てに感謝していますが、あの状況にはもう耐えられませんでした」。ユスフさんは援助したMSFのスタッフに打ち明けた。「私は家族に安全な生活を用意するためにシリア北部を離れました。残してきた4人の娘たちは、爆弾が落ちる町に暮らし、治安のために学校にも通えません。武装集団はいたるところで金目当ての誘拐を繰り返しています。事態はもはや制御不能で、毎日娘たちの身の危険を心配しています。私は単に、あの子たちが怖い思いをすることなく安心できる場所を見つけたいだけなのです。それが私の夢です。誰にも奪わせません」

ユスフさんは結局、11月8日の夕方、当初下船を許可されなかった他の生存者とともに上陸を許可された。


リビアでの壮絶な体験──アクタルさんの証言


バングラデシュ出身の21歳の青年アクタルさん(仮名)は、MSFに、約2年前に母国を離れたと話した。彼はシリア、リビア、そして最終的に地中海にたどり着き、過密状態の木造船に命がけで乗り込んだ。

海上で66人が乗った木造船を発見し、全員を無事救助した=2022年10月27日 (C) Candida Lobes/MSF

「この旅がこんなに過酷になるとは想像もしていませんでした。リビアに1年以上滞在し、さまざまな国の人たちと共にキャンプに収容されました。300人以上に対しトイレが一つしかない場所で、10平方メートルの部屋に9人で寝かされました。ある日警察がやってきて、住民の多くを逮捕し、私も刑務所に連れて行かれました。数日後に携帯電話を渡され、家族に電話するように言われました。看守にナタで手を切ると脅される様子を撮影され、母は電話口で悲鳴を上げました。家族は結局、私を解放するために有り金全てを送ってくれました。母を苦しめた自分を悔やんでいます。それ以来、家族からは音沙汰なしです。私が海で溺れたとしてもわからないでしょう。家族に電話して、生き残ったことを伝えることが私のただ一つの望みです」

ジオ・バレンツ号は11月10日にカターニア港を出港し、再び海上に出て救助活動の準備をする。人びとを溺死に追いやり、安全な場所への下船を拒否する、 欧州や各国の海難救助放棄の姿勢に対する抗議だ。

「人道援助団体として、これまでどおり国際海事法に則り、海上での人命救助活動を続けていきます。救助活動とは海から人びとを引き上げるだけでなく、生存者全員が安全な場所に降り立つことで完結するものです」とギルは付け加えた。


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