医療・医薬・福祉

名古屋大学が株式会社PREVENTとの共同研究成果を発表

株式会社PREVENT
うつ病の高リスク群を同定 -メタボリック症候群が抗うつ薬の開始と関連する-

名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部データセンター今泉貴広特任助教は、同大学予防早期医療創成センターの吉田安子特任教授、大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科学教室の丸山彰一教授、医学部附属病院先端医療開発部データセンターの安藤昌彦病院教授、株式会社PREVENTの萩原悠太代表取締役らと行う共同研究で、特定健康診断(いわゆるメタボ健診、以降メタボ健診)の新しい意義を見出すことができました。メタボ健診によって保健指導の対象となる肥満、血圧、脂質、耐糖能異常が、心臓病や脳卒中といった生活習慣病だけではなく、働き世代を中心とした集団におけるうつ病発症の高リスク群を同定するのに役立つ可能性を、Scientific Reports誌に発表しました。


【ポイント】


血圧、脂質、耐糖能の異常、20歳からの10kg以上の体重増加や現在の肥満がうつ病の発症リスクと関連
働き盛りのメタボ健診の新たな意義として、うつ病発症の高リスク群を同定することに寄与





【背景】
メタボ健診は元来、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患の危険因子とされてきました。メタボ判定による早期ハイリスク群の同定によりこれらの疾患に対する予防的アプローチが向上してきました。しかし働き盛りの世代にとっては不眠、不安障害、適応障害、うつ病などの精神疾患による負荷が、一人一人の健康を害するだけでなく、労働生産性の低下などの社会的な問題もはらんでいました。また、我が国ではうつ病に対して医療機関を受診して治療を受ける割合が諸外国に比べて低いことが知られており、うつ病のリスクの高い集団を同定することが求められていました。

一方、糖尿病や肥満などのメタボリック症候群の要素がうつ病の治療に伴って合併しやすい病態であることは以前から知られていました。しかし近年、逆に糖尿病や肥満などがうつ病の発症に関連する報告がなされるようになりました。そこで、同研究チームは、メタボ健診がうつ病の発症の高リスク群を同定するのに役立つのではないかという仮説を立て、PREVENTの有する健康保険・特定健診情報を用いてその仮説を検証しました。

【研究成果】
PREVENTに蓄積された二次データを基に、2014年から2019年までの間に健康診断を受けた方を対象として、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬のいずれか)を開始することをうつ病の発症と定義し、そのリスク因子を探索する研究を行いました。合計8万人ほどの対象者の方のうち、研究開始時点から少なくとも2年間抗うつ薬を使用しておらず、期間中に抗うつ薬を開始した場合を新規抗うつ薬開始とし、これを抗うつ薬を開始しなかった方と比較し、背景因子の違いを比較しました。結果として、メタボリック症候群のいずれの要素を持つ場合も、そしてその要素が1つ2つと増えるごとに抗うつ薬の開始との関連が強くなりました。

【研究の意義】
これまでの研究では特定健診は主にメタボリック症候群を持つ対象者を特定し、保健指導を行うことに主眼が置かれていました。しかし近年、メタボリック症候群を持つ対象者に対する保健指導の効果が限定的であるとする報告が出されるなど、有効性が疑問視されることもありました(Fukuma et al. JAMA Intern Med 2020)。しかし、今回の研究は、これまで注目されてこなかったメタボリック症候群とうつ病との関連を明らかにしただけでなく、健康診断の新しい意義を見出すことにつながったと考えています。我が国ではうつ病患者さんが適切な医療を受ける機会が諸外国に比べて低いことが知られています。今回の研究成果により、メタボ健診の段階でうつ病の危険因子を認識し、受診勧奨につなげていくことができるのではないかと期待されます。

表1.新規抗うつ薬の開始と関連するメタボリック症候群とその関連指標


論文情報
論文名:Identifying high-risk population of depression: association between metabolic syndrome and depression using a health checkup and claims database
掲載誌:Scientific Reports
筆者:Takahiro Imaizumi, Takuya Toda, Michitaka Maekawa, Daisuke Sakurai, Yuta Hagiwara, Yasuko Yoshida, Masahiko Ando & Shoichi Maruyama
DOI:10.1038/s41598-022-22048-9

筆頭著者
名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部データセンター
特任助教 今泉貴広
HP:https://statakahiro.com/

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株式会社PREVENT
所在地:〒461-0004 愛知県名古屋市東区葵一丁目26番12号 IKKO新栄ビル9F
代表者:萩原悠太
事業内容:医療データ解析、生活習慣病の重症化予防支援事業等
HP:https://prevent.co.jp/
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