医療・医薬・福祉

浜松市と包括協定を結ぶ浜松医科大学が新型コロナウィルス新検査技術の実証実験を始めます

浜松市
国立大学法人浜松医科大学は2020年12月~2021年3月に、浜松市の協力、(株)日立社会情報サービス、(株)タウンズ、NanoSuit(株)の協賛のもと、イムノクロマトグラフィ(抗原検査)の新検査法を用いて、今冬、新型コロナウイルスの偽陽性、偽陰性患者を検出する検証実験を実施します。


 本実証実験では浜松医科大学光尖端医学教育研究センターナノスーツ開発研究部と附属病院検査部が協力して、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス感染疑い患者に対してイムノクロマトグラフィとPCR検査を同時に行います。
 抗原検査とPCR検査の結果に差がでた症例に関して、世界最高感度でイムノクロマトグラフィ法であるナノスーツ法-卓上電子顕微鏡を用いて再検証を行います。臨床情報と比較検討することにより正確な偽陽性・偽陰性の検出を試み、感染性のある症例の抽出を検討します。本実証実験により自治体・住民の安心・負担軽減につながることを目指します。


【実証実験の概要】
・期間:2020年 12月~2021年3月
・場所:浜松医科大学 (静岡県浜松市東区半田山1-20-1)
・検証対象者:浜松医科大学に来院する新型コロナウイルス感染疑いの外来・入院患者
・実施主体 :国立大学法人 浜松医科大学 ナノスーツ開発研究部
・協力団体 :浜松市
・協賛団体 :(株)日立社会情報サービス、(株)タウンズ、NanoSuit(株)


【問い合わせ先】
浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター
ナノスーツ開発研究部 河崎秀陽
TEL/FAX 053-435-2504
090-2921-0011
Mail: gloria@hama-med.ac.jp

【実証実験の目的・内容・期待される効果】
 人類は常にパンデミックの脅威にさらされています。感染症の蔓延を防ぐため、早期診断検査は常に求められています。RT-PCRでは検査結果まで時間がかかり、特に救急現場での利用に難があります。イムノクロマトグラフィは操作が簡便かつ迅速で、現場の医療従事者が検査可能な非常に便利な検査ツールです。COVID-19に関しても「ゲームチェンジャー」として期待されています。

 近年、我々は、「生物機能の高度活用技術」の一つとして、生物試料を「生きたまま・濡れたまま」高真空を必要とする電子顕微鏡で観察できるNanoSuit(R)法を確立しました。この技術により簡便・迅速に多くの試料をそのまま電子顕微鏡で観察することができるようになったのです。

 この技術をイムノクロマトグラフィに応用し、静岡県産業振興財団など多くの方々の支援も受け、標的金属粒子の直接観察による高感度化診断を探索しました。インフルエンザイムノクロマトグラフィ臨床検体を、ナノスーツ法を用いて安定化させ、テストライン上にある金粒子数を電子顕微鏡でカウント後、background粒子数との差を統計処理し陽性判定をおこないました。その後、肉眼診断と電子顕微鏡診断結果をRT-PCR結果と比較しました。その結果、定量性がありかつ感度向上を認めることが確認できました(全体では肉眼診断は77%、電子顕微鏡診断では94%の陽性感度)。特に低コピー数 (Ct値30.0~38.0) の範囲で差は顕著となり、肉眼診断より最高100倍程度の感度向上を示しました(1)。これは感染性のある患者を検出するPCR診断(2)とほぼ同等の検出能力と考えられ、理論上イムノクロマトグラフィの世界最高感度です。いち早く世界の研究者等に周知のため、特許出願後にpreprintとして投稿し(1)、現在論文として発表予定です。

 今冬はインフルエンザと新型コロナウイルスの同時感染が懸念されます。大流行した場合は、医療現場等の大混乱も予想され、より迅速な診断の対応が迫られます。一方、最近ではRT-PCR法の陽性感度と感染性の関連に齟齬があることが懸念されていますが、抗原検査の感度でも十分臨床現場で対応できるのではないかと提案がなされています(3)。

 そこで我々は、この10月に新しく発売されたタウンズ社の新型コロナウイルス抗原検査とPCR検査の両方の検証実験を行います。両者の結果が異なる症例に対して、卓上電子顕微鏡を用いた高感度なナノスーツ・イムノクロマトグラフィ法での再検証を、NanoSuit(R)溶液を利用して行います。この際、テストライン上にある金粒子数のカウントには、日立社会情報サービス社が本実証用に提供する人工知能(AI)を用いた画像解析ソフトを使用します。

 上記比較により、最高感度でのイムノクロマトグラフィ結果とPCR結果との比較が可能となり、検査結果と臨床情報により感染性のない症例を発見することもできると期待されます。この検証実験により、新型コロナウイルス検査への信頼を高め、より社会への安心へとつなげる効果が期待できます。

※文献
(1) Sensitive quantitative and rapid immunochromatographic diagnosis of clinical samples by scanning electron microscopy - preparing for future outbreaks, Hideya Kawasaki, Hiromi Suzuki, Masato Maekawa, Takahiko Hariyama, medRxiv, 2020, doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.20.20106864

(2)「COVID-19検査法および結果の考え方」日本感染症学会 2020年10月12日、http://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=47

(3) Rethinking Covid-19 Test Sensitivity — A Strategy for Containment. Michael J. Mina, M.D., Ph.D., Roy Parker, Ph.D., and Daniel B. Larremore, Ph.D. N Engl J Med. 2020 Sep 30. doi:10.1056/NEJM2025631

※用語解説
1.イムノクロマトグラフィ:毛細管現象を用いた物質の分離と抗原抗体反応を組合せた迅速検査(診断)の手法の1つ。インフルエンザの診断や妊娠検査薬など幅広く応用されている。いくつかの企業が、新型コロナウイルス(2019-nCoV/SARS-CoV-2)に対して、イムノクロマトグラフィによる迅速診断キットを開発した。膜の端に測定試料を滴下すると、毛細管現象によって、もう一端に向かって広がっていく。測定試料中に抗原が存在すれば、抗原と標識抗体が免疫複合体を形成しながら移動し、膜上に固定されたキャプチャー抗体に捕捉されることで直線状に発色する(テストライン)。その後、抗原と反応しなかった標識抗体が、標識抗体に対する抗体と反応することで直線状に発色すれば(コントロールライン)、検査が正しく実施されたと判断される。

2. NanoSuit(R): 「ナノスーツ」と呼ぶこのコーティング技術は、食品添加物の一種と化学的に類似した生体適合性物質を使うもので、ナノメートル単位の薄さで柔軟性のある膜を形成して生体を保護する。電子顕微鏡がとらえる電子の後方散乱を妨げることなく、生体内の水分の放出を抑制する。従来の実験方法は、生物試料を化学固定した後、形をできるだけ維持する乾燥法により試料内部の液体成分を除去したのち、試料表面に金やオスミウムなどでコーティングをして観察していた。この方法で注意深く作業を行っても、体内に水分が多い材料では変形をなかなか防ぐことができず、高倍率で観察すると未処理の変形に比べて少ないとはいえ、微細構造に多くのアーチファクト(人工的に変形した構造)が観察されていた。たとえばボウフラを従来法で観察するとシワシワの微細構造が観察されたが、ナノスーツ法を用いて電子顕微鏡内で生きたままのボウフラを観察すると整然と並んだ蛇腹構造が観察された。従来法の電子顕微鏡観察では、その処理に時間がかかるだけでなく、処理による変形を観察していた可能性がある。ナノスーツ法で観察すれば、数分の処理で変形のほとんどない姿を観察することができる。本法は、導電性も付与できるので、ナノスーツ_イムノクロマト電子顕微鏡法として利用できる。

3. Ct値: Threshold Cycle値の略で、反応の蛍光シグナルがThreshold Lineと交差する時点のサイクル数を示す。Ct値はターゲットの初期量に反比例するため、DNAの初期コピー数の算出に使用できる。Ct値が小さいほど、ターゲット量は多い。


4. 抗原検査の感度向上:真陽性、真陰性を増やし、偽陽性、偽陰性を減らす。
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