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新型コロナウイルス:ファイザーとモデルナのワクチンは、生産者を増やして世界的な普及を

国境なき医師団
米国食品医薬品局(FDA)は12月8日と今月末、米ファイザー/独ビオンテック、および米モデルナがそれぞれ開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用承認に関する会合を開く。これを受けて国境なき医師団(MSF)は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を終息させるには、ワクチンの承認だけでなく、これら企業がワクチン製造に係る知的財産、技術、データ、ノウハウの共有を進め、より多くの生産者がワクチンを原価で供給できる体制を築いていくべきだと訴える。


ベネズエラの新型コロナ感染症患者。MSFが共同運営する病院の集中治療室にて=2020年9月 (C) Carlos Becerra/MSF

ワクチンがすぐさま行き渡らない理由

MSFアクセス・キャンペーン共同ディレクターであるシドニー・ウォン医師は、「世界はワクチンの承認を心待ちにしていますが、まだこの動きを手放しで喜ぶことはできません」と述べる。「数量の限られた初回接種分の大半は、米国や英国、欧州連合(EU)などの一部の国が買い占め、短期的には他の国々にほとんど行き渡らないのが現状です。私たちが求めているのは、世界中でワクチン供給を迅速に拡大させることで、より多くのワクチンを入手できるようにすること。そして各国の支払い能力ではなく、世界保健機関(WHO)の公衆衛生基準に基づいて分配が行われることです」

新型コロナワクチンの初期供給が妨げられているのは、ワクチンの生産メーカーを、開発した製薬会社が決められる、という人為的な仕組みがあるからだ。モデルナはこれまでのところ、パンデミックが続く間は特許権を行使しないと公言した唯一の企業となっているが、この約束を最も有意義なものとするには、同社がすべての知的財産、技術、データ、ノウハウを他のメーカーと共有し、生産量の拡大を実現させることだ。一方、ファイザー/ビオンテックは、英国で先週、ワクチンが緊急承認されているが、知的財産権で守られた技術のライセンス許諾や、技術移転をする予定はないとの見解を示している。世界規模の生産と供給の拡充を実現するには、同社も世界的なライセンス共有を進め、他のワクチンメーカーへの技術移転を全面的に行うべきである。

公的資金が投入されたワクチン開発

これら2つのワクチンは、いずれも複数の政府から多額の公的資金を受けて開発された。だが、これらの資金援助には、企業側がすべての技術を他のワクチンメーカーに移転すること、コストの透明性を確保すること、ワクチンを原価で販売することなど、多くの国への普及に向けた条件は付けられていなかった。

ワクチンの世界的な普及を実現するには、全面的な透明性が重要である。両社は、研究開発、臨床試験、製造コストなどの重要な情報を公開してこなかった。アストラゼネカを始めとする他の新型コロナワクチンの開発企業は、パンデミックの間は「利益なし」の価格でワクチンを販売することを約束したが、ファイザーとモデルナの両社はこのワクチンの原価販売は行わないと表明している。

モデルナは米国政府から25億ドル(約2597億円)近い公的資金を受けとったにもかかわらず(※)、同社は米国を含む高所得国に向けて1人当たり(2回接種分)50~74ドル(約5195円~7688円)の価格を提示していると報じられている。現時点では、低所得国や中所得国向けの価格は明らかにされていない。ファイザーのワクチン研究開発は、提携先のビオンテックを通じて得たドイツ政府から4億4300万ドル(約460億円)近い助成金と、欧州投資銀行から受けた1億1800万ドル(約122億5902万円)以上の融資に支えられている。ファイザーは、1人あたり(2回接種分)40ドル(約4156円)の価格を目指していると見られる。

※モデルナは4月に4億8300万ドル(約501億7887万円)、7月に4億7200万ドル(約490億3608万円)、8月に15億2500万ドル(約1584億3225万円)を受領した。

「新型コロナワクチンによって多くの希望がもたらされようとしていますが、世界的な普及と手頃な価格を実現するための鍵となる情報を、製薬会社が市民の監視の目から隠したままにしていることは残念でなりません」と、MSFアクセス・キャンペーンの米国政策顧問ダナ・ジルは話す。「政府や製薬会社は、研究開発、臨床試験、製造のコストなど、重要な情報を公開にすることで、ワクチンの開発に資金を提供し、完成したワクチンの購入費用を負担することになる納税者や公的機関への責任を果たさなければなりません。市民には知る権利があります。透明性がなければ、一般市民は適正な価格かどうかを評価できず、各国政府も実費に基づく価格の引き下げ交渉を行えません。ファイザーとモデルナは、説明責任の新しい手本を示し、情報を公開すべきです。いかなる企業も、このパンデミックの背後で暴利を得るべきではありません」

両ワクチンが抱える流通の課題

新型コロナワクチンの公平な普及を徹底するための課題は、供給量と価格だけにとどまらない。両社のワクチンはどちらも超低温での管理(コールドチェーン)が必要であることから、流通面でも大きな難題が残されている。モデルナのワクチンは摂氏マイナス20度での保管・輸送が必要で、ファイザー/ビオンテックのワクチンは摂氏マイナス70度と、北極圏の冬の気温よりも低温に保たなければならない。このためワクチンの輸送、保管、使用には大規模な冷凍設備が必要で、MSFの活動地のような環境が整っていない地域では大きな課題となるだろう。
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