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千葉が誇る資源「ヨウ素」の力で、医薬品開発を金属フリーで簡単に!創薬から基礎的な学術研究まで幅広く利用可能な新合成法

国立大学法人千葉大学
 千葉大学大学院融合理工学府博士前期課程2年の綿 智理 氏と大学院理学研究院・千葉ヨウ素資源イノベーションセンターの橋本 卓也 特任准教授の研究グループは、千葉で多く産出される天然資源のヨウ素を利用した、新しい有機合成法の開発に成功しました。これにより、従来の技術では触媒の毒性が高く実用化ができなかった合成法を、ヨウ素を利用した安価で低毒性な触媒により行うことが可能となりました。医薬品に汎用される主要な構造を効率的に得ることができるため、今後の創薬研究において医薬候補品の簡単で迅速な合成を可能にする技術として期待されます。  本研究成果は、2021年1月23日に米国化学会誌Journal of the American Chemical Societyオンライン版に速報誌として公開されました。



研究の背景


図1:アルケンのアミノオキシ化
 1,2-アミノアルコールは窒素-炭素-炭素-酸素の順で結合した構造で、低分子医薬品(注1) の世界売上において上位20位の中の8つに含まれている重要な分子骨格です。
 1,2-アミノアルコールを有機合成する方法に、安価で入手容易なアルケンという物質を基に合成するアルケンのアミノオキシ化があり、最も合理的な方法の一つとされています(図1)。この合成法を実現するには、ノーベル化学賞受賞者のK. Barry Sharpless教授らの開発したオスミウム触媒を利用した方法(図2)が著名であるものの、オスミウム金属が高価であること、またその毒性から医薬品開発への実用化には至っていませんでした。
図2:オスミウム触媒を使った シャープレス不斉アミノオキシ化:オスミウム金属の高コストと高毒性、ならびに目的とする化合物と似て非なる化合物(構造異性体)もできてしまうことが課題であった。



研究成果


図3:本研究で新たに開発したアミノオキシ化反応で使用するヨウ素触媒の構造式
 千葉大学では2018年に千葉ヨウ素資源イノベーションセンター(注2)を開所し、千葉県が世界産出量のおよそ4分の1を占める重要な天然資源であるヨウ素の有効活用を目指した研究開発を行っています。
 この知見を活かして、本研究グループは、オスミウムを安価で低毒性なヨウ素に置き換える研究に取り組んできました。研究成功のカギを握ったのは、本研究グループで独自に開発した「N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステル」という、アルケンに窒素と酸素を与える新試薬でした。日本の研究が世界をリードしてきた有機ヨウ素触媒化学の知見を活用し、基質にその試薬を混ぜたことによりヨウ素触媒(図3)で、アルケンから欲しい構造の1,2-アミノアルコールだけを効率的に合成できるようになりました(図4)。
図4:本研究で開発された、ヨウ素が活性中心になる触媒を使った不斉アミノオキシ化反応


成果のまとめと今後の展望

開発されたヨウ素触媒を使った不斉アミノオキシ化反応の利点は、以下の通りまとめられます。
・千葉が産出する天然資源の有効活用
・金属フリーかつ低毒で実用化に適している
・実験操作が簡単で、誰でも最低限の設備で実施できる
・欲しい化合物だけを選択的に作ることができる

この研究の成果は、非常に簡単かつ毒性を気にすることなく任意の1,2-アミノアルコールを合成できる新たな方法として、創薬研究から基礎的な学術研究まで幅広く利用されると期待されます。

研究プロジェクトについて

本研究は、ヨウ素学会ヨウ素研究助成、宇部興産学術振興財団、東洋合成記念財団、千葉大学グローバルプロミネント研究基幹、科学研究費助成事業(JP18H04256, JP19H02710)の支援により遂行されました。


用語解説

注1)低分子医薬品:分子量がおよそ500以下の医薬品のこと。世界売上の上位20位に含まれる成分については、https://njardarson.lab.arizona.edu/content/top-pharmaceuticals-poster を参照。
注2)千葉ヨウ素資源イノベーションセンター(CIRIC):日本は世界有数のヨウ素産出地でありながら、その有効利用が課題となっている。CIRICでは、産学が連携して高付加価値なヨウ素製品の社会実装を目指している。
参考:同センターウェブサイト「ヨウ素とは」https://ciric.chiba-u.jp/iodine.html

論文情報

論文タイトル:Organoiodine-Catalyzed Enantioselective Intermolecular Oxyamination of Alkenes
雑誌名:Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.0c11440
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