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スポーツ競技時の剣道選手の視覚機能を評価する最適な方法を明らかに

学校法人 順天堂
~ 競技種目にあわせた視機能評価法と視覚トレーニング法の確立へ ~

順天堂大学大学院医学研究科眼科学の村上晶 教授、工藤大介 助教とスポーツ健康科学研究科の中村充 教授らの共同研究グループは、日本で用いられているスポーツ時の視機能を測定する方法の有用性について検証しました。





ポーツ時の視機能評価は、今まで8項目の検査により行われてきましたが、検査そのものの信頼性については検討されていませんでした。本研究では、剣道選手に8項目の視機能測定とその統計的解析を行った結果、従来の8項目検査は有用であるものの、剣道という競技においては8項目すべてが必要ではなく、3項目の少ない検査で競技時の視機能を評価できることがわかりました。本成果は、従来行われてきたスポーツ時の視機能評価法の妥当性について検討した論文としては世界初であり、競技種目にあわせた科学的根拠に基づく視覚トレーニング法の開発につながる可能性があります。本論文はScientific Reports誌のオンライン版に公開されました。

本研究成果のポイント


スポーツ時の視機能検査8項目で剣道選手群と運動習慣のない被験者群を比較した。
8項目の標準検査はスポーツ時の視機能測定法としては有用であるが、剣道では3項目で評価可能なことを明らかにした。
競技種目に最適な検査項目の設定と、競技種目別の科学的な視覚トレーニング法の確立につながる成果である。


背景
スポーツにおける視機能の重要性は以前から指摘され、競技能力の高い選手は低い選手に比べ、視機能が有意に優れていたという報告は多くあります。スポーツ時における視覚の研究はアメリカで始まり、特殊な視機能検査と、その測定成績を高めるためのトレーニング法の開発や実践、評価が中心に行われてきました。日本においては、アメリカにおける検査をもとにした8項目を標準検査として用いることにより、現在までに多くの研究が行われてきました。しかし、この8項目が本当にスポーツ時の視機能を評価する検査として適切なのか、また、8項目の全てを実施する必要があるのかといった、検査自体の妥当性について検討した研究はありませんでした。そこで今回研究グループは、この標準検査項目の妥当性について評価するために、剣道の選手の視機能を測定したデータを統計学的手法で解析、検討しました。

内容
日本においてスポーツ時の標準視機能評価法*1は長らく8項目の検査によって行われてきました。8項目とは、SVA(静止視力)、KVA(縦方向動体視力)、DVA(横方向動体視力)、CS(コントラスト感度)、OMS(眼球運動)、DP(深視力)、VRT(瞬間視)、E/H(眼と手の協調性)です。本研究では、この検査について、(1)スポーツ時の視機能を反映する検査として適切か、(2)8項目の検査全てが必要か、(3)8項目全てが必要でない場合はどの検査が必要でどの検査が不要か。また、最適なモデルはどの組み合わせか、の3つの点について明らかにする計画を立てました。
方法は、(1)を評価するため、運動の習慣のある被験者とない被験者を同数程度、計100名以上を集め、8項目検査を測定しました。その際、競技の特徴によって誤差が生じることを避けるため、運動習慣群の競技種目は剣道に限定しました。そして得られた測定データを統計学的手法を用いて解析し(2)、(3)について検討しました。
その結果、運動習慣群と非運動習慣群では、SVA(静止視力)、KVA(縦方向動体視力)、E/H(眼と手の協調性)の3つの検査項目において運動習慣群が非運動習慣群に比べて有意に良い結果を示しました。次に、8項目の全てを使用したモデルと、統計手法によって選択された項目のみを使用したモデルを比較したところ、運動習慣群の視機能を評価する最適なモデルは1.SVA(静止視力)、2.VRT(瞬間視)、3.E/H(眼と手の協調性)の3項目を使用したモデルであり、8項目検査すべてを行う必要はなく、この3項目だけで運動習慣群の視機能が評価できることが明らかとなりました。また、これらの視機能は、剣道に必要な視機能〔1.相手を観察する(SVA:静止視力)、2.一瞬の隙を突く(VRT:瞬間視)、3.手で竹刀を振るう(E/H:眼と手の協調性)〕と一致しており、競技特性を反映していると考えられました(図)。以上の結果は現在までに用いられてきた8項目の標準視機能評価法そのものの科学的評価となり、今後これらの検査を使用する際の指針となる可能性があります。




今後の展開
今回は剣道選手を対象とし、剣道に必要な視機能を評価する最適な方法を明らかにしましたが、他の競技においても同様の手法で識別モデルを構築することが可能なため、競技毎に重視すべき視機能が明らかになることが想定されます。また、それにより、さまざまな競技種目に適した科学的根拠に基づく視覚トレーニング法の開発につながる可能性があります。研究グループは、さらに競技歴や競技能力による差の有無や、年齢、性別による視機能の差異などの影響についても明らかにしたいと考えています。

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研究グループからのコメント
スポーツと視覚の関係は非常に複雑で、この研究分野の現状は混とんとしています。この8項目の視覚機能検査が盛んに行われていた時代は「視覚を鍛えることで競技能力が上がる」が定説とされ、さまざまな競技の選手の測定が行われていました。しかし、視覚とスポーツの関係はそんなに単純なものではなく、脳の機能など多くの因子が複雑に絡んでいそうだ、ということが明らかになりつつあり、これら8項目検査も積極的には行われなくなってきています。一方で、この8項目検査には日本のスポーツ視覚研究の黎明期に、多くの研究者達が測定してきたデータや見解の蓄積があり、それら先人達の成果を未来に繋げられないかと考える中、本研究のアイデアを着想しました。
今回は眼科学講座とスポーツ健康科学研究科との共同研究により、今まで日本で行われてきた8項目検査に改めて着目し、その相関を解析して詳細に評価することができました。この8項目検査には競技種目に応じた最適な組合せがあることを明らかにできたことで、現在まで日本で行われてきた8項目検査を用いた研究成果を踏まえ、より客観性のあるスポーツと視覚機能の研究に繋げることが出来るという期待をもっております。
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用語解説
*1.スポーツ時の標準視機能評価法:
アメリカで行われてきた検査を参考に、日本では長らく8項目の検査をスポーツ時の視覚を評価する標準検査としてきた。8項目には、SVA:静止視力、KVA:縦方向動体視力、DVA:横方向動体視力、CS:コントラスト感度、OMS:眼球運動、DP:深視力、VRT:瞬間視、E/H:眼と手の協調性がある。

原著論文
本研究はScientific Reports誌のオンライン版で(2021年1月11日付)先行公開されました。
タイトル: Optimal methods for estimating sports vision in kendo athletes
タイトル(日本語訳): 剣道選手の視機能を評価する最適な方法
著者:Daisuke Kudo1), Yoshimune Hiratsuka1), Mitsuru Nakamura2), Yusuke Uchida3), Seiji Ono4), Akira Murakami 1)
著者(日本語表記): 工藤大介1)、平塚義宗1)、中村充2)、内田雄介3)、小野誠司4)、村上晶1)
著者所属:1)順天堂大学医学部眼科学講座、2)順天堂大学スポーツ健康科学部、 3)名城大学理工学部、4)筑波大学体育系
DOI: 10.1000.333.444.doi,2000

本研究は順天堂リサーチプロジェクトNo.0750の支援を受け実施されました。
なお、本研究にご協力いただいた皆様には深謝いたします。


<関連リンク>
■スポーツビジョン研究でアスリートをサポート!順天堂医院 眼科スポーツドクターの挑戦
(インタビュー:医学部眼科学講座 工藤 大介 助教)

 https://www.juntendo.ac.jp/sports/news/20201020-02.html
■インタビュー紹介動画https://youtu.be/-kGqFXuGYD8

順天堂大学医学部眼科学講座 工藤大介助教
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