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暴力の横行するエルサルバドル:難民・移民の抑制策見直しを

国境なき医師団
米国と中米のエルサルバドルが9月20日、 難民・移民の抑制協定を締結した。これを受けて国境なき医師団(MSF)は、「世界で最も危険」な国のひとつとされるエルサルバドルは、米国から受け入れを拒否された庇護希望者にとって安全ではなく、難民・移民を抑制するための政策は見直されるべきと訴えている。


メキシコと米国の国境で送還者を対象に一時診療や心理ケアを提供するMSFスタッフ (C) Christina Simons
自国の安全も守れない国

エルサルバドルは中米のホンジュラス、グアテマラと並んで「世界で最も危険」と言われる中米北部三角地帯の一角を占める。この地域からは迫害や暴力から逃れるため、毎年約50万人が米国への移住を目指す。今回の協定は、米国に入国する移民の数を減らし、庇護希望者の保護責任を各国政府に転嫁しようとする米国の取り組みの一貫。本協定に先立ってグアテマラとホンジュラスでも同様の協定がすでに締結され、これらの国々は庇護希望者に避難場所と保護を提供するとみなされている。

「エルサルバドルは自国民の安全さえ守れない国です」と同国でMSFの活動責任者を務めるステファン・フーロンは話す。「私たちのチームは毎日のように現地住民を襲っている暴力を目撃しています。この国人びとは暴力が横行している自国を命がけで脱出してメキシコを抜け、米国へ避難しようとしています。米国政府ですらエルサルバドルを危険な国とみなし、自国民には渡航を控えるよう勧めているくらいです」

エルサルバドルでMSFは、昨年を通して、米国から送還されてきた人が増える一方で受け入れ体制が整っていない状況を目撃している。同国でMSFは2019年初めから9月25日までに、1434人に心のケアを実施。そのうち57%は暴力もしくは暴力による身近な人の死を経験していた。2016年1月から2019年8月にかけて、ホンジュラスのテグシガルパ市では1983人の性暴力の被害者と暴力の被害者2482人を治療した。

苦しみの連鎖――逃れられない暴力

「何千人もの人が激しい暴力から逃げてくるような国が 避難場所として適していると考えるなど、馬鹿げています」とメキシコでMSFの活動責任者を務めるセルヒオ・マルティンは話す。「人びとが暴力から逃れるために否応なく自国から逃亡する状況があるかぎり、どんな協定や壁も人びとを止められないでしょう。移民や庇護希望者は前より危険なルートを選ばざるを得なくなり、これまで以上に人身売買目的の拉致や強盗、暴力の被害に遭う危険にさらされます」
MSFはメキシコを横断して米国に向かう途中にある、移民が泊まる簡易宿泊所で活動している。エルサルバドルから来る人びとは、ホンジュラス人とグアテマラ人とあわせると、MSFが治療している患者の大半を占めている。今年に入ってから心のケアを受けた患者の88%は暴力の被害者であった。こうした人たちは、実際に身の安全を保証できる国で、治療を受けるとともに保護機構に相談する必要がある。グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルは、いずれも暴力から逃れてきた人びとにとって安全な国ではなく、難民を抑制するための政策は見直されるべきである。

MSFはエルサルバドルで2017年から活動。サンサルバドル市内とソヤパンゴ市内各地で移動診療を運営している。ギャングの暴力を恐れて自宅地域から自由に移動できず、思うように医療を受けられない人びとを支援している。またMSFはソヤパンゴ市で救急搬送体制も支援。最近は国内避難者と送還者に対するケアも始めた。メキシコでは、簡易宿泊所で医療と心のケアを移民・難民を対象に行っている。簡易宿泊所の場所はテノシケ、コアツァコアルコス、メキシコ市、ヌエボ・ラレド市、メヒカリ市、レイノサ市、マタモロス市。ホンジュラスでは1974年以来活動を継続。チョローマ市とテグシガルパ市で、医療、心、心理社会面のケアを暴力と性暴力の被害者に行っている。
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