その他 医療・医薬・福祉

抗結核薬デラマニドのさらなる低価格化を――南アでの価格引下げ受けMSFが呼びかけ

国境なき医師団
大塚製薬の抗結核薬「デラマニド」の価格が南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)政府に対し引き下げられた。国境なき医師団(MSF)は、この動きを好意的に受け止めつつ、同薬のさらなる低価格化と、同薬を必要とする他の全ての国々へ同様の低価格適用を求めている。 特許権をもつ大塚製薬から販売権を得た米マイラン社は2020年6月1日に、南アフリカでの半年の治療コース分を940米ドル(注1)(約10万円)、月平均で約1万7000円と設定する見通しだ。デラマニドは、2014年に開発された比較的新しい抗結核薬で、治療の難しい超多剤耐性結核(XDR-TB)を含む薬剤耐性結核(DR-TB)の感染者に、他の薬と組み合わせて使用される。


朝一番に服薬する錠剤を見せる南アフリカの超多剤耐性結核患者。この中に含まれるデラマニドは患者にとって治癒への希望となっている (C) Sydelle WIllow Smith

低価格化で治療の普及拡大を

デラマニドはDR-TB治療薬の中でも最も高価な薬の一つだ。結核の治療薬と診断ツールを調達するための仕組み、Global Drug Facility(GDF:世界抗結核薬基金)経由で入手した場合の治療コース半年分の価格が1700米ドル(注2)(約18万円)、月平均で約3万円にも上る。しかも、それは治療に必要な複数の薬の1つに過ぎない。この高価格が主な要因となって、多剤耐性結核(MDR-TB)やXDR-TB感染者の治療費用全体がかさんでしまう。20ヵ月の治療コースを終えた場合、薬の使用期間や併用される薬にもよるが、GDF経由の価格が1人あたり8000~1万2000米ドル(約86万円~129万円)に上る可能性がある。

高い薬価は治療の普及拡大の足かせになってきた。デラマニドは2014年4月に条件付きながら欧州医薬品庁の承認を得たにもかかわらず、全世界の結核専門家で構成されるDR-TB Scale-Up Treatment Action Team(DR-TB治療拡大活動チーム)によると、2019年8月末までにデラマニドで治療を受けた人はわずか2902人にとどまった。同チームには、各国の結核対策プログラムや、MSFのように大規模に治療を提供する機関から最新の情報が寄せられる。

薬剤耐性結核治療に欠かせない新薬

世界保健機関(WHO)の治療ガイドラインは、MDR-TBとXDR-TBの完全経口治療としてデラマニドなどの新薬の使用を推奨している。MSFも、より多くの国が注射の必要な毒性の高い旧世代の治療薬から、新薬を用いる完全経口治療へ移行するよう呼び掛けている。これまでMDR-TBの治癒率は55%、XDR-TBは34%と、あまりにも低く、その改善のためにも、新薬の活用は欠かせない。小児MDR-TB患者の治療成績の向上と、副作用リスク軽減のための使用も急務だ。

しかしながら、マイラン社が南アフリカに提示した940米ドルは依然として高価過ぎる。また、同社がこの価格を全ての国に適用する否かについても明らかではない。特にフルオロキノロン系薬剤(注3)への耐性まん延に直面するインドのような国は、ジェネリック薬(後発医薬品)メーカーの供給網参入と、それによるいっそうの薬価引き下げが望めるよう、強制実施権で特許を覆すなどの有効な手立てを講じるべきだ。英リバプール大学の研究者の試算では、デラマニドは各国の結核対策プログラムで普及すれば1ヵ月あたり5~16米ドル(約537~1717円)と、現在よりもずっと低価格の製造・販売でも利潤が見込めるという。


MSFが南アフリカで使用するデラマニド (C) Sydelle WIllow Smith

ストッブダン・カロン――MSF医療顧問/医師(インド)

「ムンバイの診療所では、フルオロキノロン耐性のあるXDR-TB感染者と、小児MDR-TB患者の治療がうまくいかず、いつも悪戦苦闘しています。治療の不成功率と死亡率は受け入れがたいほどに高く、深刻な問題です。こうした患者の治癒率向上には、効果的な治療計画と、新薬であるベダキリンおよびデラマニドの速やかな入手が求められます。

940米ドルでも、デラマニドがDR-TB薬として最も高価なものの一つであることに変わりはありません。そして、この高価格は引き続き、各国政府の結核対策プログラムへの導入拡大において足かせとなるでしょう。ベダキリンとデラマニドがこうした国々で調達できない価格に設定されている限り、世界中のXDR-TB前段階の患者、XDR-TB患者、小児MDR-TB患者に完全経口治療が実現する日が近づくことはなく、注射の必要な旧世代の薬が引き起こす、半永久的な聴覚障害など、ひどい副作用の苦しみは今後も続くでしょう。結核対策プログラムが完全経口治療の費用を賄い、これを普及拡大できるよう、大塚製薬とマイラン社はデラマニドの価格をさらに引き下げるべきです」

注1:価格は配送・手数料および保険料(約15%)を含み、付加価値税(15%)は含まない。
注2:工場渡し価格:積み込み、出荷、保険料、輸入関税などの追加的な諸費用を含まない薬価。
注3:フルオロキノロン:DR-TB治療に欠かせない役割を果たす抗生物質の系統。インドなどの国でまん延しているフルオロキノロン耐性は、この耐性を有するDR-TB患者の治療の不成功や死亡に関わるだけに大いに懸念される。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ
本コーナーの内容に関するお問い合わせ、または掲載についてのお問い合わせは株式会社 PR TIMES ()までご連絡ください。製品、サービスなどに関するお問い合わせは、それぞれの発表企業・団体にご連絡ください。

関連記事(PRTIMES)

横浜市立大学医学部医学科同窓会 倶進会