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呉医療センター・中国がんセンターなど6施設との共同研究 実用化に向けて、胃がんを対象としたAI病理診断支援ソフトウェアの汎用性を実証

オリンパス株式会社
病理医の負担軽減につながる、感度100%、特異度50%以上の精度を達成

オリンパス株式会社(取締役 代表執行役 社長兼CEO:竹内 康雄)は、独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター(院長:下瀬 省二)を含む6施設(※1)との、AI病理診断支援ソフトウェアの実用化に向けた共同研究を行う中で、6施設から提供された胃生検の病理標本に対してAI病理診断支援ソフトウェアが感度(※2)100%、特異度(※3)50%以上の精度を達成、汎用性を実証しました。 なお、本研究成果は2021年8月20-22日のJSDP(日本デジタルパソロジー研究会)定時総会2021にて、広島大学大学院医系科学研究科分子病理学研究室 谷山大樹先生が発表されました。


▪研究成果の概要
・学習データを追加し、AI病理診断支援ソフトウェアに合計957件(※4)の病理ホールスライド画像(※5)を学習。
・学習させたAI病理診断支援ソフトウェアで6施設、約200件ずつの病理ホールスライド画像を判定。
・病理標本の厚みや色味などが施設ごとで異なる中、全施設で感度100%、特異度50%以上を達成。
・引き続きAI病理診断支援ソフトウェアの改良により、更なる精度向上と汎用性確立を目指す。

※1  独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター、独立行政法人国立病院機構大阪医療センター、独立行政法人国立病院機構四国がんセンター、独立行政法人国立病院機構長崎医療センター、国家公務員共済組合連合会広島記念病院、 一般社団法人呉市医師会呉市医師会病院
※2  陽性を陽性と診断する割合。
※3  陰性を陰性と診断する割合。
※4  呉医療センター・中国がんセンターを含む、計3施設から提供された病理ホールスライド画像を学習に使用。
※5  病理標本全体を高倍率で撮影した複数枚の顕微鏡画像を1枚の画像として観察できるように加工したデジタル画像。

AI病理診断支援ソフトウェアの推論結果イメージ 左:元の病理ホールスライド画像 右:AI病理診断支援ソフトウェアが推論したヒートマップ 腺がんの確率が高く、陽性と思われる部位は赤く表示し、腺がんの確率が低い、陰性と思われる部位は青く表示。
▪研究の背景と経緯
近年多くの病院で病理医が不足する中、診断の多様化等により病理診断件数は2005年から2015年にかけて2,143,452件から4,762,188件と約2.2倍に増加、がんの治療方針(治療薬)を決定するためなどに行う免疫染色件数も、151,248件から426,276件と約2.8倍に増加しており、病理医の負担が課題となっています(※6)。その対策としてAIによる病理診断支援の需要が高まっており、オリンパスの科学事業は当社イノベーション推進の取り組みの一環として2017年から呉医療センター・中国がんセンターと研究の第1フェーズ(※7)となる共同研究に取り組み、胃生検の病理ホールスライド画像368件をもとに、感度100%、特異度50%の精度をもつAI病理診断支援ソフトウェアを開発しました。

共同研究に参加する6施設の病理標本例
2020年11月からは、研究の第2フェーズ(※8)として製品化に向けたAI病理診断支援ソフトウェアの汎用性の検証、および精度向上を目的として、呉医療センター・中国がんセンターを含む国内6施設との共同研究を開始しています。診断に使用する病理標本は作製する施設ごとに厚みや色味などにバラつきがあることが多いため、病理標本の差異に影響を受けずに判断できるAIアルゴリズムの実現は、AI病理診断支援ソフトウェアの実用化に向けた重要なポイントになります(右図参照)。


共同研究の期限である2023年まで、引き続き学習件数の追加とAIアルゴリズムの改良を行い、さらなる精度向上と汎用性の確立に取り組みます。将来的には本ソフトウェアを製品化することで、病理医の負担を軽減し、更なる診断の質向上に貢献することを目指します。

※6  厚生労働省 大臣官房統計情報部 社会医療診療行為別調査より引用
※7  第1フェーズについての詳細はこちら https://www.olympus.co.jp/news/2018/nr00867.html
※8  第2フェーズについての詳細はこちら https://www.olympus.co.jp/news/2020/nr01947.html

▪共同研究に参加する6施設とその役割



1. AI病理診断支援ソフトウェアの開発・評価
2. 収集した胃生検標本のデジタル化と診断検証
3. 匿名化した胃生検標本と病理診断結果の提供と教師データの作成

▪研究成果の詳細

本研究について
AI病理診断支援ソフトウェアのディープラーニング技術には、病理画像の特徴解析に最適化したコンボリューショナルネットワーク(※9)(以下CNN)を用いています。この技術により、画像の腺がん(※10)組織領域を識別し、更にその結果に基づいて腺がん画像と非腺がん画像の分類を行うことができます。今回の研究は、呉医療センター・中国がんセンターに2施設を加え、計3施設が所有する病理標本から作成した教師データを用いてCNNのモデルを学習させる学習ステップと、学習させたモデルを用いて6施設が所有する病理標本から作成した病理ホールスライド画像を腺がん画像と非腺がん画像に分類する推論ステップの2段階で構成しました(図1)。なお本研究成果の詳細の文中において、6施設の表記はA,C,E,G,H,Iとします。

※9  画像解析に適したディープラーニング技術として広く用いられている方式。解析対象の特徴を効率的に学習できる。
※10 がんの一つ。胃生検におけるがんのほとんどが腺がんと言われている。
図1.本研究の全体像

研究内容
学習ステップではG,H,Iが所有する病理ホールスライド画像から、画像の各画素に病理医によるアノテーションを付けた教師データを作成し、合計957件の教師データをCNNに学習させました(図2)。

図2.学習させた教師データ数の内訳
そして推論ステップでは、学習ステップで学習させたCNNを用いてA,C,E,G,H,Iの6施設がそれぞれ所有する200件前後の病理ホールスライド画像から癌領域を検出し、腺がん画像と非腺がん画像に分類させました(図3,4)。

図3. 推論ステップで用いた各施設のデータ数
図4. AI病理診断支援ソフトウェアの 推論結果イメージ


画像分類を行った結果、A,C,E,G,H,Iの全施設で感度100%、特異度50%以上を達成できました。(図5,6)
図5. ROC曲線(縦軸:感度、横軸:1-特異度)
右は感度0.9-1.0域の拡大図。全施設において、感度100%かつ特異度50%以上を達成している。

図6. 推論ステップにおける6施設の結果
▪独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター病理診断科について
呉医療センター・中国がんセンターは中国地方における基幹病院の一つであり、病理診断科は多数の病理診断を日々行うと共に広島大学分子病理学教室および呉市医師会病院と連携して地域医療の病理診断も行っています。また、兼務する腫瘍病理研究室としてデジタルパソロジー領域を含む最先端の学術研究を行い、国立病院機構病理協議会メンバーとして臨床病理研究も積極的に行っています。

本リリースに掲載されている社名及び製品名は各社の商標または登録商標です。

▪オリンパスのライフサイエンス分野について
オリンパスは1919年の会社創立以来、顕微鏡を製造してまいりました。現在、ライフサイエンス分野の顕微鏡システムは、臨床研究、教育、最先端研究などの用途で使用されており、お客さまの様々なニーズに応えています。詳しくは、www.olympus-lifescience.com/ja/ をご覧ください。

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