その他 医療・医薬・福祉

地中海:世界で最も過酷な移民ルートで新たに10人が死亡

国境なき医師団
リビアから欧州を目指し、命がけで地中海を渡る移民・難民の海難捜索救助を行う国境なき医師団(MSF)は11月16日、救助した木造船内で10人が死亡しているのを発見した。MSFの捜索救助船「ジオ・バレンツ号」は、リビア沿岸から30海里内で活動中、海上遭難時の緊急連絡を受ける民間団体「アラーム・フォーン」と、民間の偵察機「シーバード」から、浸水している木造船があると連絡を受け、現場に急行、99人を救助したが、10人の発見は手遅れだった。MSFは地中海中央部の海域が、移民・難民が命を落とす最も危険なルートになったことは、欧州政治の怠慢によるもので、恥ずべきことだと批判する。


リビア沿岸から約30海里の地点で、過密状態の木造船から生存者の救助にあたる「ジオ・バレンツ」号=2021年11月16日 (C) Virginie Nguyen Hoang/ HUMA


救えなかった10人の命


当日、MSFのチームは99人を無事に救助した後、生存者から下甲板にもっと多くの人が詰め込まれていて、話しかけても反応がないと知らされた。救助隊はその後10人の遺体を発見。救助された人によると、亡くなった人びとは狭い船の下甲板で13時間以上も過ごしており、そこには燃料のような異臭が充満していたため、窒息死したと思われるという。

ジオ・バレンツ号でMSFの副捜索救助チームリーダーを務めるフルビア・コンテは、「陸に着いたらきちんとした形で埋葬できるように、2時間ほどかけて遺体をジオ・バレンツ号に乗せました。恐ろしさと同時に怒りがこみ上げました。避けられたはずの海の悲劇です」と憤る。

木造船から救助された最後の生存者、アブドゥライエさん(仮名)は、仲間たちに起きた悲劇を知る間もなく、救助隊員に腕をつかまれ、救命ボートに乗り込んだが、その後ジオ・バレンツ号に乗り込むと、震える声でこう懇願した。「仲間たちの亡骸を見せてください。僕にとっては兄弟同然。同じ場所から来て、一緒にリビアを通過したのです。それぞれの家族に亡くなったことを伝えなければなりません。一目会わせてください」


過酷な経験をした生存者を安全な場所へ


ジオ・バレンツ号は11月15日と16日、マルタとリビアの捜索救助海域と公海内で24時間以内に3回の救助活動を実施し、186人を無事救助した。生存者は男性152人、女性34人で、そのうち未成年者は61人。小さな子どもを連れた女性が何人もいて、一番幼い子どもはまだ10カ月だった。救助者の出身国はギニア、ナイジェリア、コートジボワール、ソマリア、シリアなど多岐にわたり、その多くは、小さな木造船が出発したリビアで過酷な経験をしていた。

救助活動により空になった木造船。99人が救助、10人の遺体が回収された=2021年11月16日 (C) Virginie Nguyen Hoang/ HUMA
救助された人びとは、ジオ・バレンツ号に乗り込んだときこそ安堵して歓声を上げていたものの、急性のストレスや心的外傷の兆候が見られた。ほとんどの人は過酷な経験の後の恐怖を訴えていた。中には、数時間前に目の前で亡くなった弟や友人の遺体を確認しなければならない人もいた。

ジオ・バレンツ号でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるキャロライン・ウィルメンは、「10人の遺体を運ばなければならないこのような日には、欧州のやる気のなさを再び痛感します。地中海中央部では、献身的かつ積極的に捜索救助態勢を整える必要があるにも関わらず、政治は手を打とうとしません。リビアで人びとは恐ろしい人権侵害にさらされ、逃れるための唯一の方法が、地中海の横断という信じがたいほど危険な選択しかないことがほとんどです。今この船には亡くなった方の遺族を含む186人の生存者が乗船しています。何時間も狭い木造船の中で遺体に囲まれていた人びともいます。私たちは、極度のストレスと心的外傷を抱えた人びとを上陸させられる安全な場所の特定を急いでいます」と話す。



企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ
本コーナーの内容に関するお問い合わせ、または掲載についてのお問い合わせは株式会社 PR TIMES ()までご連絡ください。製品、サービスなどに関するお問い合わせは、それぞれの発表企業・団体にご連絡ください。

関連記事(PRTIMES)