医療・医薬・福祉

【ニュース】サイバニクス治療によるALS患者の歩行機能改善の有効性を示す論文公開

CYBERDYNE株式会社
~ “難病中の難病”ALSで運動症状を改善させた唯一の治療法として画期的な成果 ~

 CYBERDYNE株式会社 (茨城県つくば市、代表取締役社長:山海嘉之、以下「当社」) は、当社のHAL医療用下肢タイプ(以下、「医療用HAL」)に関する研究成果が、脳神経外科と神経学の分野をカバーしている医学ジャーナルである「Journal of Clinical Neuroscience」(※1)のオンライン版にて公開されましたので、お知らせします。東邦大学医学部の研究グループは、治療薬などによって進行の抑制はみられても筋力低下が改善することはない進行性の神経変性疾患であるALS患者に対して、医療用HALによるサイバニクス治療(※2)1クール(全9回、頻度2-3回/週、1-2か月間)の前後で比較した結果、歩行機能改善に有効であることを示しました。



◆ 発表者名
森岡 治美(東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 助教(任期))
平山 剛久(東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 講師)
海老原 覚(東邦大学医学部リハビリテーション医学研究室 教授)
狩野 修(東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 教授)

◆ 発表のポイント
 ● ALSに対するサイバニクス治療が歩行機能の改善に有効であることを示した。
 ● ALSの進行抑制を示した治療薬はあるが、運動症状を改善させた治療法はない。
 ● 歩行機能を維持、改善することにより、ALS患者のQOLも改善することが期待される。

◆発表内容(東邦大学発表内容より)
ALSは脳・脊髄などの運動ニューロンが障害される進行性の神経変性疾患です。運動ニューロンが障害されるため、四肢を動かす、飲み込む、話す、呼吸する筋肉がやせ、筋力低下を引き起こします。予後が3~5年と短いうえに、進行を止める治療法がないため、“難病中の難病”という呼ばれ方もされています。治療薬としてリルゾール、エダラボンが保険適用となっていますが、筋力低下や、やせを改善するわけではないので、患者さんは効果を実感しにくいです。東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野では2018年より、ALSの歩行機能改善を目的とした治療に医療用HALを導入しました。本邦では、2016年4月にALSを含む神経・筋疾患(全8疾患)に対し、保険適用になりましたが、臨床治験でもALS患者は24症例中1例のみであったため、ALSに対する効果を十分に証明するために、さらなる研究成果が待ち望まれていました。
本研究では2019年1月から12月までに当院でALSと診断された患者で、10m以上安全に自立歩行はできないものの、介助または歩行補助具を使用して10m以上歩行が可能な患者11名を対象としました。評価方法として、HAL治療1クール(全9回、頻度2-3回/週、1-2か月間。実施時間:装着や休憩を除き20-40分)の前後で2分間歩行距離、10m歩行テスト(速度、歩幅、歩行率を評価)、ALSの運動機能評価尺度(ALSFRS-R)、Barthel Index(BI)、機能的自立度(FIM)、努力性肺活量を観察し、解析しました。その結果、平均歩行距離は治療前の73.87mから治療後89.94m(p=0.004)に伸びました。また、10m歩行の歩行率の平均値も、治療前の1.71から治療後1.81(p=0.04)へと改善しました(図1)。なお有意差は観察されなかったものの10m歩行における速度や歩幅も改善傾向を示し、ALSFRS-RやBI、FIMは維持される傾向を示しました。歩行機能障害はALS患者のADLやQOLを低下させます。継続的なHAL治療により、歩行機能をさらに維持、改善できる可能性もあり、今後の研究成果が待たれます。

◆発表雑誌
雑誌名:「Journal of Clinical Neuroscience」(2022年3月11日)
論文タイトル:Robot-assisted training using Hybrid Assistive Limb ameliorates gait ability in patients with amyotrophic lateral sclerosis
著者:Harumi Morioka Takehisa Hirayama, Tatsuki Sugisawa, Kiyoko Murata, Mari Shibukawa, Junya Ebina, Masahiro Sawada, Sayori Hanashiro, Junpei Nagasawa, Masaru Yanagihashi, Masayuki Uchi, Kiyokazu Kawabe, Naohiro Washizawa, Satoru Ebihara, Takashi Nakajima, Osamu Kano*
DOI番号:10.1016/j.jocn.2022.02.032
論文URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0967586822000856

◆狩野 修教授のコメント
ALSの進行を抑制するような治療薬開発や治験が世界中で競うように実施されているが、そのほとんどが期待を裏切る結果となっている。リハビリテーションも含めた通常の治療においても、筋力をいかに維持するかに主眼が置かれ、改善することはほぼない。そんな中、今回医療機器であるHALを用いた治療で予想以上の結果が得られたことに対し、驚きと希望の光を見いだした。
本研究は1~2ヶ月という短期の観察研究であったが、すでに、我々のグループから少数例ではあるが、長期間のHAL治療効果の論文が採択され、公開前の状態である。今後、HAL治療の症例を積み重ねることにより、長期間の歩行機能維持に加え、生命予後延長の効果や生活の質(QOL)への効果を検証する必要がある。
本研究結果は、リハビリテーション療法士の杉澤樹氏をはじめとした、東邦大学ALSクリニックのスタッフ全員のご協力のお陰であり、この場を借りて深謝したい。

参考:東邦大学プレスリリース
https://www.toho-u.ac.jp/press/2021_index/20220317-1194.html


※1 Journal of Clinical Neuroscienceは、隔月で発行される査読付きの医学ジャーナルで、脳神経外科と神経学の分野をカバーしています。 1994年に設立され、Elsevierの出版社であるChurchill Livingstoneから出版されています。

※2 サイバニクス治療とは、脊髄損傷や脳卒中、神経筋難病疾患の患者に対し行う、装着型サイボーグHALを用いた機能改善治療です。
人が体を動かそうとするとき、脳から運動ニューロンを介して筋肉に神経信号が伝達されることで、関節などの筋骨格系が動きます。そのとき、人の「動かしたい」という動作意思が反映された微弱な“生体電位信号”が皮膚表面に漏れ出します。HALは、“生体電位信号”を読み取りパワーユニットをコントロールすることで、人と一体となって関節の動きをアシストすることができます。この動作意思を反映した生体電位信号によって動作補助を行う装着型サイボーグHALを用いると、HALの介在により、HALと人の脳・神経系と筋系の間で人体内外を経由してインタラクティブなバイオフィードバックが促されます。これによって、高齢化に伴い増加してくる脳・神経・筋系の疾患患者の機能改善が促進されるというiBF仮説(interactive Bio-Feedback “インタラクティブ・バイオ・フィードバック”仮説)に基づき、臨床応用を通じて人の歩行の機能改善が可能であるということが確かめられつつあります。つまり、人の脳から「動かしたい」という自発的な指令信号が、脊髄や末梢神経を介して筋骨格系に伝わり動くだけでなく、実際に「動いた」という感覚のフィードバックを再び人の脳へ戻すことが、機能改善促進の重要なカギとなります。
機能改善・機能再生治療は、このiBF仮説に基づきHALを用いた人の運動機能の改善を目的とした、新しい治療技術のひとつです。

以上
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