さらなる高みを目指して。花王の男性研究員たちが果敢に挑戦した高持続化粧下地の開発



 コロナ禍でのマスク着用の日常化、来る季節に向けての気温上昇などメイクを楽しむひとたちにとって“化粧くずれ”は大敵だ。花王は化粧くずれに着目した商品をこれまでも多く展開してきた。”テカらない””くずれない”機能に対して高い評価を得てきた一方で、まだまだ悩みが解消されずにいる“超”オイリー肌のユーザーからの声が届いていた。そんな声に応えるべくはじまった新処方の持続特化型下地の開発は2017年に遡る。約4年の歳月をかけ前例を覆すアプローチでの高持続化粧下地の開発に成功した3人のスペシャリストたち。彼らの挑戦の裏側と想いをお伝えする。


■「“化粧くずれ”に本気で悩む方に応えたい」、その想いが研究のきっかけ

 花王の“テカらない”“くずれない”技術への新たな挑戦は、メイクアップ研究所に所属していた十川廉の想いからスタートした。2017年のことだった。



十川 廉

(所属(当時):花王株式会社 メイクアップ研究所 /「高持続化粧下地 技術開発担当」

現所属:花王株式会社 化粧品事業部門 商品事業開発センター メイクアップ商品開発部 プリマヴィスタ担当)



花王は当時からすでに高持続化粧下地を発売しており、市場で高い評価を得ていた。十川は、当時化粧持続技術開発の担当者として、商品に関するアンケートやインタビューを10回以上繰り返し行っている中で、化粧持続に関して一定の評価がある一方、皮脂悩みが深いお客様にはまだ満足してもらえていない、というギャップを感じていた。「悩みが深い方々にも自信を持って勧められる技術を開発したい」、このような想いが全く新しい下地開発に踏み切るきっかけとなった。化粧下地の使用者の多くは女性だが、特に皮脂量が多くテカりやすい十川自身が納得する化粧くずれを防ぐ技術が開発できればその悩みを解決できると考えた。



そこで十川が相談を持ちかけたのが、数ある花王の研究所のうち、素材の開発を行っているマテリアルサイエンス研究所。マテリアルサイエンス研究所はその名の通り、材料科学に強い部署で、数々の自社原料を生み出してきた、いわば素材のプロ集団。彼らとタッグを組んで、下地に配合されている素材を1つ1つ見直すことで、素材が皮脂にどう作用しているのかをまず明らかにする必要があると考えたからだ。



マテリアルサイエンス研究所の藤井亮介は、これまでにもスキンケア、ヘアケア等の分野において、素材開発の実績があり、ヘアセット剤での研究において今回のヒントとなる知見を持っていた。ヘアセット剤の効果を持続させるためには、毛髪にセット剤が付着した状態を維持し、湿度や動きに負けない特性を発現する必要がある。化粧下地も同様に、肌の上に下地が密着した状態を持続させることが重要で、皮脂や擦れに負けない特性が求められる。


 皮脂と素材の関係性を明らかにし、また素材を持続させる知見のある藤井と組みたいと考えた十川は、藤井が所属する部署の上司に直談判。こうしてマテリアルサイエンス研究所の藤井が十川とタッグを組むこととなった。



藤井亮介

(所属:花王株式会社 マテリアルサイエンス研究所/「高持続化粧下地 素材開発担当」)



藤井は十川からの熱い想いを聞き、新たな化粧持続技術を完成させたいと想いつつも、葛藤があったという。十川が求める理想像に到達できるのか、当時使用されていた化粧持続技術を超える技術をつくれるかどうか不安であり、プレッシャーだったと振り返る。というのも、花王で長らく使われ続けていた化粧持続の技術=皮脂をはじくキー素材の性能はかなり高いとの認識があったからだ。

スキンケアやヘアケアなどでの研究実績のある藤井にとって、皮脂の研究は初めてのことだった。まず初めに、皮脂はどういった化学構造を持つ成分からなるか、その分泌量、顔のどの部位から分泌しやすいか等、論文を読むことで知識を深めていき、さらにその道に詳しい研究員から話をきいて、化粧下地に配合されている素材を見直していった。


■突破口は均一な塗膜を作ること、新技術発見までの道のり


化粧くずれ、テカりが起こる原因のひとつは時間が経って出てきた皮脂によるもの。これを防ぐことが化粧持続技術の本質。藤井は、皮脂を塗膜表面に広げない、つまり皮脂をはじくことがポイントと考えてあらゆる角度からそれを突き詰めてきた。

そして、ある日、従来技術の下地の塗膜を、目には見えないミクロな構造が見える電子顕微鏡で観察すると、微細な穴(隙間)が開いていることに気づいたのだ。皮脂をはじくために使ってきたキー素材が塗膜上で不均一な状態を作ったためで、このため塗膜性能が十分に発揮されていないことが分かった。これが新技術への突破口となった。





 藤井と十川は「化粧下地の皮脂との相性と塗膜の均一化」を更なる持続機能向上のための技術開発のポイントに据えた。その結果、これまで配合することが前提であったキー素材を使わない、全く新しい素材の組み合わせによって、均一さゆえに膜のどこでも皮脂をはじくことのできる持続塗膜を作ることに成功した。従来のキー素材を使用しないことは、過去に化粧持続技術にかかわってきた研究の先輩たちにとっても驚くべきことだった。皮脂をはじくためには必ず必要と思われていたからだ。





 十川と藤井がタッグを組んで1年以上経ち、ようやく、新技術を完成させることができた。

藤井は今回の技術開発を振り返って、「従来の分析機器では化粧下地の本質を理解するには限界を感じ、電子顕微鏡による観察を適応したことが功を奏した。新しい試みによって、よりモノづくりの視野が広がったことがポイントだったのではないか」と語る。



■商品への応用に向けて、3人目のスペシャリストが参画。使用感、仕上がり、細部にまでこだわり抜く


十川と藤井がプロトタイプを作り上げたのと時を同じくして為行舞斗が研究メンバーに参画。

為行は大学院で界面活性剤や乳化を専門に研究をした経験があったため、その経験から化粧下地の開発を任されることになった。先輩である十川から“男性が化粧品を開発する想い”を教わりながら、処方開発に取り組んでいった。



為行舞斗

(所属:花王株式会社  メイクアップ研究所/「高持続下地 処方開発担当」)



十川と藤井が開発した初期のプロトタイプは、化粧くずれに関しては良い性能だったものの、お客様に使ってもらうには使い心地や仕上がりが不十分だった。二人が苦労の上作り上げた新しい高持続下地技術を、さらに商品としても魅力に仕立てるためにその他の性能もこだわることは非常に重要と感じていた。

使い心地や仕上がりの優れた下地は何がポイントなのか、自社品に関しては、その下地を開発した当人に話を聞きに行き、その秘訣を学び、また自身の処方を見せてアドバイスをもらうといったことを繰り返した。また商品のジャンル問わず、日やけ止めやスキンケア品の処方についても学び、また、他社品も購入して使ってみては勉強して、ということを重ね、知見を蓄積していった。



そして、実際にサンプルを作っては、翌日の朝にすぐに顔に塗って試す、また、毎日、半顔ずつ異なる下地のサンプルを塗り、夕方の顔を研究員評価してもらって、より優れたものを探し出し、という作業を繰り返して、処方の方向性を絞っていった。そして見込みの良いサンプルを同僚に使用してもらい、意見を参考に処方を調整。化粧品は素材の配合量を0.1%、0.01%変えるだけでも使用感や仕上がりが変わってしまう。為行はこのわずかな変化を肌でとらえ、細部にまでこだわりながら100を超えるサンプルを作成。ようやく納得のいく処方を完成させた。藤井と十川も完成した処方の性能に納得し、十川が中心となり、皮脂悩みを持つ方々に開発した処方を使ってもらいインタビューを行ったところ、従来技術と比べてより多くの方が、使い心地や仕上がりに満足しながらも持続性能の高さを評価し、自分達の技術によってユーザーが抱える課題を解決できると確信した。



■スペシャリストたちの新技術開発への原動力と想いは、次なる挑戦へ


彼らを突き動かしたもの、それは、常にユーザーの声に寄り添い、ユーザーが抱える課題に真摯に向き合い解決したいという強い願いだった。この技術開発の検討を始めた2017年から4年の歳月をかけて商品を発売、そして現在、この技術は花王の多くの化粧下地に応用されている。

十川はこの後、研究開発部門から、消費者へ近い事業部の商品開発を担当する部署へ異動となった。「この研究を通じて、お客様の声により耳を傾け、悩みを解決していきたいと考えるようになった。お客様のニーズをマーケティング担当部署と連携して先読みし、かつ、研究者としての経験も活かしながら、今まで以上に満足度の高い商品を提供したいと強く願い、異動希望を出した」と語った。現在十川は花王を代表するベースメイクブランド「プリマヴィスタ」の商品開発に携わっている。

コロナ禍においてマスクをするのが常となり、開発の最中に「マスクをしてもくずれにくい」という新しいニーズが出現、マスクの着用がベースメイク、特に化粧下地にどう影響するのかについて新たな研究テーマとなったが、今回の高持続下地の技術は、皮脂をはじく塗膜が肌の上にできることでマスク擦れにも強く、マスク着用でも化粧がくずれにくいことが分かっている。

今回の新技術は、取り組みの内容が社内でも認められ、今年の初め、研究開発部門を代表し社内表彰された。3人の男性研究員たちは口を揃えて、「今後もユーザーの抱える課題を技術や素材の力で解決していき、商品として届けていきたい」という。高みを目指した挑戦は、まだまだ続いていく。




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