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たばこで労災が増加も
分煙では防げぬ「受動喫煙」 企業が禁煙強化の流れ

 大和教授は、埼玉県八潮市の工業団地で行われた調査から、喫煙者は労働災害のリスクが非喫煙者に比べて1.6倍高くなると紹介した。要因としては(1)ニコチン濃度が下がって集中力が途切れる(2)一酸化炭素による酸素不足-などが複合的に重なったと思われると語った。

大和浩・産業医科大学教授提供

 「3000人が働いている製鉄所の調査でも、1日10本以下の低依存者で1.52倍、10~20本の中等度依存者で1.98倍、労災リスクが高いとの結果が出た」。大和教授は「製鉄業の労働災害ゼロの入り口は喫煙者ゼロ」と言い、禁煙は重要な経営課題の一つだとした。

 ◇敷地内、就業時は完全禁煙

 受動喫煙で年間1万5000人が死亡するとも言われる中、東京都受動喫煙防止条例の策定に深く関わった弁護士・東京都議会議員の岡本光樹氏はシンポジウムで、分煙職場で働く非喫煙者が職場を相手取った裁判で勝訴するケースが相次いでいると指摘。「受動喫煙からの保護が労働契約法の安全配慮義務違反に該当する」ためで、使用者がこうした訴訟が起きるのを未然に防ぐよう求めた。

 そのための抜本的な対策として、岡本氏は屋外を含む企業敷地内や就業時の完全禁煙が今後の課題となるとした。

 ◇「喫煙の自由」に制限

 事業所施設内の完全禁煙について岡本氏は「企業秩序定立権限の一環である施設管理権に基づいて定めることができる」と指摘。就業時間中の禁煙については「(経営者の)労務指揮権、企業秩序定立権限および、(従業員の)職務専念義務、企業秩序遵守義務に基づいた禁止措置が考えられる」としている。

弁護士・東京都議会議員の岡本光樹氏

 禁煙の社会的な広がりに対抗して喫煙者が求める、いわゆる「喫煙の自由」に関して岡本氏は「『権利』と呼べるか疑問。判例からも制限に服しやすいと理解される。受動喫煙は『他者危害』で喫煙の自由は制限される」との見解を示した。

 また、喫煙者を新規採用しないとの施策については、「始めている企業は増えている。原則として(企業に従業員)採用の自由がある。(喫煙の)申告を求めることも違法ではない。最高裁判例に基づいて認められている」と語った。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、東京都の受動喫煙防止条例に類似した厳しい条例を制定する自治体が増えるのは確実。公共スペースに加え、職場においても禁煙が広がる流れは止められない。(解説委員・舟橋良治)

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