インタビュー

受験失敗のケアを=大きい思春期のショック(上)

 受験競争が厳しいのは大学だけではない。受験に有利な中高一貫教育の中学や有名大学への進学率が高い高校へ進むためのハードルは高い。問題は受験の失敗が与える影響だ。東京慈恵会医科大付属病院精神科の小野和哉准教授は「思春期は、体と心の両面で大きな変化を迎える。それは小学校から中学校へ進学する際に、『中1ギャップ』などと呼ばれる問題が起きることなどとも関連する」と指摘する。

 不登校や引きこもりも

 でも12~15歳は精神的に不安定で、ストレスに弱い。このため中学や高校の受験で第一志望校に合格できなかったりする場合のショックは大きい。人生はこれからなのに、その後の進路が描けなくなるからだ。
 最も危険なのは、「自分には価値がない」と思い込んでしまうこと。小野准教授は「単にプライドや自分の存在意義が傷付けられた、と思う以上に深刻な状況になる。日常生活でのやる気を失い、ひどくなると気分が落ち込み、対人関係を回避する不登校や引きこもりなどの問題が起きることもある」と言う。
 大事なのは、自分自身を肯定的に捉える感情だ。この自己肯定感は、人生の中で成功や失敗といった体験を積むことで強くなり、多少の挫折で損なわれなくなる。12~15歳まででは、人生経験に限りはある。しかし小野准教授は「大人には理解できない程度の成功体験や達成感でも、本人にとっては大きな支えになることがある」とした上で、「幼少期から学童期にできるだけ幅広い体験を重ね、少しずつ自己肯定感を高めていくことが大切だ」とアドバイスする。

 ◇合格しても残る不安

 志望校に合格できた場合でも、不安要素は残る。進学先の環境や対人関係が希望していたものと違ったと感じる場合や授業や部活動についていけない場合、合格により一度は達成された自己肯定感が損なわれ、怠学や不登校などに陥ってしまう危険が生じる、という。
 「合格不合格を問わず対策としてはまず、さまざまな分野でちょっとした達成感を感じられる機会を求めていくことが大切だ。例えば、毎日10分でもいいから、決まった運動プログラムを取りあえず1カ月は継続してみる。そうした事を通じ気力と体力を回復して精神的ダメージから立ち直り、新たな目標に挑んでいくことは有効な対策の一つだ」(編集委員・鈴木豊)

→〔後半へ進む〕受験失敗のケアを=親も一緒に落ち込まない(下)


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