インタビュー

受験失敗のケアを=親も一緒に落ち込まない(下)

 中学や高校の入試で不合格となったとき、親が子供と一緒に落ち込んでいてはますます悪い結果をもたらしかねない。小野准教授は親子がつらい体験を受け止めていくためには、規則正しく、健康的な日常生活を送ることが大切だ、と語る。志望した中学に落ちることもあるだろう。その時には、「あの名門高に入って取り戻そう」などと考えない方がよい。心の傷をいやしながら、日常の安定を取り戻すことが大事だ。

 ◇公的相談施設に相談を

 ストレスから不安感や抑うつ感を感じ、うつ病や統合失調症などの代表的精神障害の前駆的状態、自閉スペクトラム症や注意欠如多動性障害のような発達的な課題からくる不適応が明らかになる場合もある。「疫学的な調査によると、不登校や引きこもりの背景には種々の精神的障害も少なからず見出されている。このような場合は、医療機関による早期の介入や指導が必要となる。この意味で、公的相談機関で受診を促された場合には、できるだけ早期に医療機関を受診して欲しい」と小野准教授は話す。
 こんな時に頼りになるのが、自治体の教育委員会が開設・運営している「教育センター」や「子供の心の相談室」などだ。かつては、教員経験者が退職後に自分の体験に基づいて相談に応じていたというイメージが強かった。しかし、近年は多くの臨床心理士を配置し、そこでは無料で心理検査をして適切なアセスメントを行ってくれたり、プレイセラピーやカウンセリングなど治療的アプローチも行ったりしている。必要なら専門医の助言や医療機関を紹介してくれるといった高機能な施設が増えている。小野准教授自身も東京都台東区の「子供の心の相談室」で支援に携わった経験がある。

 ◇子供と「一定の距離」

 小野准教授によれば、受験に失敗したときの親の接し方、つまり「包容力」もカギになる。近年、自分と子供を同一視し、子供と一緒に落ち込むような親が増えている、という。しかし、子供が大人よりはるかに傷付きやすい存在であることを忘れてはならない。難しいかもしれないが、「朝ごはんをきちんと食べて、夜更かししない規則正しい生活をしようね」と語るようなゆとりが欲しい。
 親と子供が精神的に距離が近過ぎると、親の落ち込みが子供を苦しめてしまう。「春休みなどを利用して、ホームステイなどで親と子と距離をとって冷静になる時間をつくるのも一つの対策だろう。その上で、児童・生徒に対して別の面で自己肯定感を得られる状態をつくり出すことが重要になる」と、小野准教授は力説する。(編集委員・鈴木豊)

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