治療・予防

体温の高低と寿命の関係は=一喜一憂せず適度な運動を

 人間の平均体温はおおよそ35~37度だが、その幅の中でも高い人と低い人がいる。近年、「体温が高いと免疫力がアップするから健康にいい」とされる一方で、「低体温の方が体に害を及ぼすがん細胞などを活性化させないので長生きする」ともいわれる。一体どちらがいいのだろうか。

 ◇代謝が老化の原因?

 体温は高い方がいいという説の根拠は、冷え性が体調不良や腰痛の原因になるように、体温が低いと血液の循環が悪くなって免役力が下がり、さまざまな疾患を引き起こすからだ。だから「運動や食習慣を改めて体温を高くして免疫力を高めた方がいい」ということになる。

 一方、高体温が寿命に影響を及ぼすという考え方も昔からある。エネルギーをたくさんつくるために代謝が活発になると体温が上がるが、同時に体に悪影響を与える活性酸素が大量に発生し、結果的として体にダメージを与えて老化を進める原因になるというわけだ。

 ◇低体温で寿命延長?

 米国立老化研究所(NIA)の研究によると、体温の低い人の方がわずかながら生存率は高くなるという結果が出た。同様に、遺伝子操作で体温を低下させたマウスの寿命が延びたという研究結果も報告されている。体温が0.3~0.5度低下しただけで、寿命がオスで12%、メスで20%延びたという。

 順天堂大学大学院スポーツ健康医科学研究所(千葉県印西市)の後藤佐多良(さたろう)客員教授は「人間の体温が変えられたらという仮定の話ですが、2度下がっただけで平均寿命が100歳になるという説もあります」と話す。

 こう聞くと、低体温説の方が優勢に思えるが、事はそう簡単ではない。「低体温では代謝が低下し、体も頭もうまく働きませんからQOL(生活の質)は大きく低下してしまいます。体温を下げてまで長生きしたいと思う人はいないでしょうね」と、後藤客員教授はくぎを刺す。

 つまり、低体温で寿命が延びるという研究結果は数多く報告されているものの、だからといって代謝を抑える、つまりできるだけ飲まず、食わず、動かずに近い生活を余儀なくされるなら、それを望む人は少ないだろう。長寿のためには過度な運動食事を避けて、体温を上げ過ぎない環境が一番いいのかもしれない。

 適度な運動は活性酸素の発生を通じて体の抗酸化能力を活性化して、死亡率を低下させているようだという研究結果もある。「体温の高低に一喜一憂せず、通常のライフスタイルの中で日常的に適度に体を動かす習慣を付けることが最終的には健康長寿につながると思います」と、後藤客員教授はアドバイスしている。メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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