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血糖コントロール(上)=やり過ぎは危険

 日本は世界に誇る長寿国だが、平均寿命と健康寿命は異なる。その健康寿命を延ばすために生活習慣病予防に対する意識が高まっている。数年前から、メタボリックシンドローム対策としてのダイエットや糖尿病予防のための血糖コントロールの方法として、エネルギー(カロリー)の摂取量を制限する「糖質制限」がブームだ。しかし、安易な糖質制限はかえって健康を損なう。肥満や糖尿病治療のエキスパートは糖質制限について警鐘を鳴らす。

 ◇糖尿病と血糖値

 生活習慣病の代表格である糖尿病。インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高くなる病気だ。国内の糖尿病患者と糖尿病予備軍を合わせると、約2000万人に上る。つまり、5人に1人が生活の改善をしないと、糖尿病が深刻化するか将来的に糖尿病になると推測されている。

 糖尿病患者が増えた背景として、戦後、食生活が豊かになり、カロリーや脂質の摂取が増えたこと、車社会となり歩く機会が減ったことがある。人との交流で生じる人的ストレスやコンピューターによるテクノストレスの増大などが関与している。糖尿病とストレスは密接な関係にある。近年の研究で、仕事や人間関係のストレスが加わると交感神経が活発になり、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されることが明らかになってきた。

 さらに偏食や運動不足で肥満になると、インスリンがフル稼働し血糖を処理する能力が低下、軽い糖尿病状態になることがある。放置し続けることにより、糖尿病を発症する人も少なくない。

◇若い女性は痩せ過ぎ

 2013年の国民健康・栄養調査によると、日本人のエネルギー摂取量の平均値はこの10年間で減少傾向にある。特に20代の女性は8人に1人が痩せ過ぎとされ、その平均摂取カロリーは戦後の食糧難だった時代を下回る。原因の一つとして考えられるのは流行のファッションだ。ファッションモデルの体型やマネキンの体型は、20代の女性の標準体重52.2キロや体格指数(BMI)の基準値である21.0を明らかに下回っている。

 メタボリックシンドロームに詳しい公益財団法人結核予防会理事で総合健診推進センターの宮崎滋所長は「極端にカロリーを抑えた食事をすると、筋肉が減り、活動量が抑えられる。これによってホルモンのバランスが崩れ、生理不順や冷え、疲れなど体にさまざまな影響を及ぼす」と指摘する。モデルの体型を目標に掲げ、高カロリーは太るという思い込みによる自己流ダイエットに走るのは危険だ。一方、一見痩せて見えるが、体脂肪率が30%以上の「隠れ肥満」の女性も増えている。隠れ肥満の人は脂肪がつきやすい上に、筋肉量が少ないため、将来、骨粗しょう症やロコモティブシンドロームなどによって転倒や骨折のリスクが高まるという。

◇糖質を上手に取る

 糖質の極端な制限は活力や筋力、集中力の低下などの状態に陥りやすくなる。糖尿病の予防やダイエットのためには、血糖値が上がらないように糖質を控えるだけでいいのだろうか。

宮崎滋医師
  糖質の選び方と取り方に着目する「スローカロリー」という食事のスタイルが注目されている。ゆっくり消化吸収される糖質を選び、ゆっくり吸収される方法で取ることで、急激な血糖上昇を防ぎ、過剰な脂肪蓄積を抑えるというバランスの良い食の考え方だ。

 医師や栄養士らでつくるスローカロリー研究会の理事長でもある宮崎滋医師は「ハードな減量を長期間、継続して行うのは困難だし、弊害もある。リバウンドで元に戻ってしまう人も多い。特にエネルギー源である糖質を必要以上に制限することは、栄養のバランスを崩し、体調不良を起こす」と話す。

 活力を持続させ、栄養バランスを維持するためには、どのようなことを心掛けたらよいのだろうか。宮崎医師によれば、食物繊維の多いものをメニューに取り入れる。よくかみ、食べる順番も考慮する―ことだと言う。「時間をかけてゆっくり食事をすることが大切。食事を楽しみながら、食習慣を整えていってほしい」(ソーシャライズ社提供)

〔後半へ続く〕血糖コントロール(下)=食品選びが大切


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