花粉症、症状出る前に効果的な治療を
~初期療法と花粉の除去・回避で乗り切る~
◇初期の併用治療で重症防ぐ
鼻噴霧用ステロイド薬についても、臨床試験で初期療法が有効だということが立証されている。
花粉本格飛散の3週間ほど前から使用すれば、症状が出てから治療を始めるより、発症を遅らせる上、重症にならないことが報告されている。
従来の「ひどくなったらステロイド薬」という使い方だと、初期の軽症時に炎症を抑えることができない。早めに薬を投入すれば、未発症・軽症の時間を延ばして症状をコントロールすることが可能だ。「抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の併用治療を初期から行うことで、重症患者の約9割が改善している。早めの対処が成果を上げていることを広めて、初期療法をもっと標準的な治療にしたい」と岡野医師は話す。
◇根本治療は免疫療法
根本的に治したいならば、免疫療法がある。減感作療法とも言う。アレルゲン(原因物質)を少量から投与し、体内に吸収させることで、アレルギー体質を弱めていく治療法だ。
皮下免疫療法と舌下免疫療法があり、皮下免疫療法は注射で投与し、舌下免疫療法は舌の下(裏側)から抗原を入れる。皮下は副反応が出ることがあり、最近は舌下が一般的になっている。
この治療を3年継続して行うと症状は軽くなり、治療終了後2年間はその状態が続くという。抗ヒスタミン薬などの薬物治療は2日服用をやめると効果が薄れ、3日目には症状が出るとされ、これと比べると免疫療法は本質的な治療だと言える。
そのほかの治療法としては、手術がある。
表面の粘膜の過敏性を抑える手術は、表層をレーザーで変性させることで、アレルギー反応を起こりにくくする。日帰りで受けることが可能だが、1、2年で効果が薄れることが多く、毎年手術したり、服薬と合わせたりする患者もいる。腫れた粘膜と変形した鼻腔内の壁を切除する手術や、鼻水やくしゃみに関係する後鼻神経を切断する方法などもある。

花粉が落ちやすい素材でできた上着
◇吸わない・減らす行動
がんばって初期療法に取り組んでも、花粉の飛散量が大量だと、残念ながら効果は十分に出ない。このため、花粉の除去と回避を徹底することが必要だ。
天気予報などで飛散情報などをチェックし、多い日は外出を控えたり、出掛ける際はマスクと眼鏡を着用する。
また、表面がけば立った素材の上着の着用を避ける。帰宅時は、服や髪に付いた花粉をよく払い落としてから入室する。洗顔、手洗いうがいを行い、鼻もかむ。
飛散量の多い日は窓を閉め、換気も短時間にとどめる。布団や洗濯物を外に干すのもしない方がいい。窓際を中心に小まめに掃除をする。
企業や研究機関を中心に花粉問題に取り組む花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)では、「花粉通過が少ない工夫がされている網戸」「花粉除去性能が高い空気清浄機」など、厳しい基準をクリアした製品に対し認証制度を設け、製品を購入する際に参考になる情報を提供している。花粉を家の中に持ち込まないよう、できる対策をしっかり取ることが大事だ。(柴崎裕加)
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(2025/02/07 05:00)
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