ビタミンD不足に注意
~小児のくる病(岡山済生会総合病院 田中弘之診療顧問)~
体内のビタミンD不足により、骨の成長に問題が生じることでさまざまな症状が表れる小児のくる病(ビタミンD欠乏性くる病)。岡山済生会総合病院(岡山市北区)小児科の田中弘之診療顧問に話を聞いた。

ビタミンD不足を予防する
◇O脚・X脚が特徴
「子供の骨は、発育期の骨の端にある成長軟骨にカルシウムとリンが沈着し、新しい骨が作られて伸びていきます」と田中診療顧問。ビタミンDは、カルシウムとリンを効率よく吸収するのに必要な栄養素だ。
ビタミンDが不足することで体内のカルシウムやリンも不足し、骨の成長に何らかの障害が起きるのがくる病だ。「3歳頃まではO脚、それ以降ではX脚が見られやすいです」。その他、歩行開始の遅れ、歩行が左右に揺れる、転びやすいなどの歩行障害、身長の伸びが遅いといった特徴がある。
なお、ビタミンD欠乏は、成人の場合は「骨軟化症」と呼ばれる。「小児と異なり、骨全体が弱くなるため、骨折しやすくなるのが特徴です」
十分な量のビタミンDを確保するには、食事による摂取と日光浴(紫外線)による体内合成が不可欠だ。「ビタミンDは魚や卵、干しシイタケなどに多く含まれ、小児であれば1日の摂取量の目安としてサケの切り身1切れ(100グラム程度)や卵2個程度といわれています。日光は、夏場は15分、冬場は30分程度、顔や手のひらに浴びると良いでしょう」
◇サプリも活用を
症状が見られたら、早めに小児科を受診したい。レントゲン検査、血液や尿の検査により、ビタミンD欠乏によるくる病か他の病気かを診断する。治療には、ビタミンDを補充する活性型ビタミンD製剤が用いられるが、食事の摂取状況によってはカルシウム製剤の内服を併用することもある。
「治療薬で、弱くなったり変形したりした部分(骨病変)が治れば、総合ビタミン剤などのサプリメントに切り替えるなどします。食物アレルギーや高齢による小食などの場合も、サプリメントで補ったりします。肝油ドロップもビタミンDを多く含むのでお薦めです。一方、牛乳や肉類にはビタミンDはほとんど含まれないので注意が必要です」と田中診療顧問は助言する。
日焼けやしみなどを避けるために日光をあまり浴びない人も多く、日本人の大半はビタミンDが不足しているとの報告もある。食事を中心に、サプリメントなども活用しつつ、適度な日光浴を意識したビタミンD不足の予防に努めたい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/06/19 05:00)
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