治療・予防

かゆみの強い病変が多発
~結節性痒疹(防衛医科大学校病院 佐藤貴浩教授)~

 結節性痒疹(ようしん)という皮膚疾患は、いぼのようなしこりが体のあちこちにでき、かゆみが強いのが特徴だ。防衛医科大学校病院(埼玉県所沢市)皮膚科の佐藤貴浩教授は「患者は、眠れない、仕事が手につかない、病変があるために半袖を着られない、気分が落ち込むなど、生活に支障を来すこともある」と話す。

結節性痒疹

結節性痒疹

 ◇直径1センチにも

 佐藤教授によると、結節性痒疹は腕の外側、太もも、向こうずねに多く、胸、腹、背中、脇腹などにもできやすい。多いと100個以上に、大きいと1個が直径1センチくらいになる。ただし、「手の届かないところはできにくい」。

 原因などは明らかになってないが、患者の約3割に、アトピー性皮膚炎の合併やその病歴、体質がある。中高年の中には糖尿病、腎臓病、肝臓病などを持つ人に発症することがある。若い人は、虫に刺された部分にできることもある。

 「かゆみに関わる神経の異常や、細胞の活性化に関わるサイトカインという物質の幾つかに産生の異常があると推測されています」。これらは皮膚の炎症やかゆみを亢進したり、皮膚を厚くしたりする。病変部はかゆみを感じやすく、繰り返しかくことで硬いしこりができる。

 かゆみ抑える新薬

 皮膚の乾燥はかゆみを誘発するため、「保湿剤をしっかり塗ることや、入浴時にごしごし洗わないようにすることが基本。それでかゆみが多少和らぐ人がいます」。その上で、炎症を抑えるステロイドの塗り薬とかゆみ止めの飲み薬による治療、症状によって光線療法などが施される。

 従来の治療で効果がない患者向けの新しい注射薬2種類が2023年と24年に承認された。特定のサイトカインの働きを阻害し、かゆみ、炎症、皮膚の肥厚を抑える。「かゆみは1カ月ほどで改善しますが、しこりの改善には3カ月以上みてください」。副作用は、結膜炎、皮膚の赤みなどがある。

 結節性痒疹のかゆみの程度は我慢できないほどだが、「かくと悪化しやすく、治療の効果も弱まることは事実。少なくとも皮膚をほじくるように強くかいたり、薬を塗るついでにかいたりするのはやめましょう」と佐藤教授は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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