フレイル高齢者の運動能力向上
~ラジオ体操の健康効果(東京都健康長寿医療センター研究所 大須賀洋祐元研究員)~
「ラジオ体操は体に良い」とされているが、具体的にどのような健康効果があるのだろうか。東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)の大須賀洋祐元研究員(現・国立長寿医療研究センターフレイル研究部副部長)らは、ラジオ体操が高齢者の敏しょう性、持久力などの運動能力を向上させる効果があることを明らかにした。

ラジオ体操の健康効果
◇3カ月の効果を比較
ラジオ体操の効果を調べたこれまでの研究によると、認知症のリスクを20%近く低下させるなど、最近になってその健康効果が徐々に明らかにされている。
ただこれまでは、研究対象者に実際にラジオ体操をしてもらい、その後に効果を分析する「介入研究」での検証は行われていない。
大須賀元研究員らが昨年12月に発表した研究では、要介護となるリスクが高い状態である「フレイル」、またはフレイルの前段階である「プレフレイル」の高齢者209人(平均年齢78歳、女性70%)を対象に、ラジオ体操を1日3回、12週間続けてもらう104人(介入群)と、同体操を行わない105人(対照群)にランダムに分けた。3カ月後に、QOL(生命の質、生活の質)の精神面のスコア、運動機能、運動セルフエフィカシー(運動を続ける自信)の変化を比較した。
◇注意力やフレイル改善
介入群のラジオ体操の平均実践率は94%と高かった。両グループを比べると、QOLの精神面のスコアの変化に差は見られなかったが、敏しょう性や動的バランス、持久力については介入群の方が改善していた。運動セルフエフィカシーの変化の程度も、介入群の方が維持できていた。
さらに、ラジオ体操をより積極的に続けた高齢者に絞って対照群と比較すると、介入群の方が認知機能の一つである注意力やフレイル度が改善していたという。
「ラジオ体操は手軽でお金もかからない運動法なので、多くの人に取り組んでいただきたい。筋トレなどと比較すると運動強度はそれほど高くないので、特に運動が苦手な人にお薦めです」と大須賀元研究員。そして「3カ月間の試験で健康効果が認められたので、長く続けることでより大きな効果が得られるかもしれない。今後は介護予防効果なども検証したい」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/07/04 05:00)
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