耳たぶに深いしわ
~動脈硬化のサインかも(博慈会記念総合病院付属老人病研究所 福生吉裕所長)~
耳たぶに深い斜めの線(しわ)が入っていたら、動脈硬化の兆候「フランクサイン」かもしれない―。フランクサインに関する調査を行った経験を持つ、博慈会記念総合病院付属老人病研究所(東京都足立区)の福生吉裕所長に聞いた。

動脈硬化の徴候とされる
◇国内外で報告
フランクサインの名称は、米国のフランク・サンダース医師が1973年、耳たぶの深いしわと狭心症などの冠動脈疾患の関係性を報告したことに由来する。以後、欧米では両者に関連があるとの研究報告が目立つ。
国内では85年度に福生所長らの研究班が、八丈島(東京都)の集団検診の受診者768人を対象に調査を実施。耳たぶに深いしわがない人に比べ、ある人では、肥満、高血圧、心電図異常、脂質代謝異常の率が高く、フランクサインは動脈硬化の可能性を判断する有用なサインと考えられるという。しわのある人は比較的高齢(50~80歳)で、男性に多かった。
「調査から40年ほどたちますが、やはりフランクサインは動脈硬化の目に見えるサインの一つではないかと考えています」と福生所長。その根拠は、「狭心症のリスクとなる肥満や高血圧がなく、喫煙もしないものの、耳たぶに深いしわのある人をよく診ると、冠動脈硬化症と診断される患者さんが一定数存在します」。
◇「未病」を意識
フランクサインと動脈硬化との間に関連性はないとするデータもある。原因も解明されていない。フランクサインが見られなくても冠動脈疾患などがある人は存在し一概に言えないものの、「耳たぶは脂肪に富み、そこに細動脈血管が多く走っています。動脈硬化が進んで血流が悪くなると耳たぶに栄養が行き届きにくくなり、脂肪が萎縮して、しわとなって表れると考えられます。老化や紫外線による皮膚のしわとは成因が異なります」。自身や家族が気付けるため、心配であれば健診結果などと合わせて医療機関で精密検査を受けるきっかけにもなるという。
福生所長は、病気になる前の段階で生活習慣改善などを目指す日本未病総合研究所の代表理事も務める。「自分の体が発する信号に鋭くなり、セルフメディケーションに努めましょう。自覚症状はなくとも健診結果で数値に異常があれば医療の助けを借り、重症化していない『未病』の段階で対策してほしい」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/07/01 05:00)
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