治療・予防

プレコンセプションケア
~子を授かるため男性も(国立成育医療研究センター 三戸麻子医長ら)~

 将来、赤ちゃんを授かることを考えながら、心身の健康を管理するプレコンセプションケア。男性にとっても、喫煙をはじめとする不健康な生活習慣が生殖機能に悪影響を及ぼすことが分かっており、重要だ。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)にある女性の健康総合センタープレコンセプションケアセンターの三戸麻子医長と、女性総合診療センター女性内科の荒田尚子診療部長に聞いた。

男性にとっても重要

男性にとっても重要

 ◇喫煙は精子に悪影響

 不妊の原因の半分は男性にあると分かっている。三戸医長によると、生物学的な妊娠・出産の適齢期は男女とも20歳代で、男性は年齢が高くなるほど精子の活力が弱くなり、パートナーが妊娠しにくくなったり、流産しやすくなったりする。子どもの発達障害の一部との関連も示唆されている。

 また、喫煙(受動喫煙含む)は精子の量と質を低下させたり、勃起不全が起こりやすくなったりするほか、流産早産のリスクも上昇して妊娠や不妊治療の妨げにもなる。さらに、飲酒、肥満、ストレス、感染症なども精子に悪影響を及ぼすという。

 三戸医長は「妊娠は女性だけの問題ではなく、男性も意識すべきです。健康に関する理解を深めて、それを活用する能力(健康リテラシー)を高める必要があります」と指摘する。「男性もプレコンセプションケアを受けることをお勧めします。例えば禁煙の時期が早いほど流産のリスクが減ることが知られています」

 ◇HPVワクチン接種

 プレコンセプションケアは、妊娠を前提にした健康管理の他に、性成熟期の男女の心身を健康にし、よりよい社会を目指すことも目的にしている。荒田診療部長は「子宮頸(けい)がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)に男性が感染すると中咽頭がん、肛門がんなどを発症する可能性があります。男性もHPVワクチン接種で自身とパートナーを守れます」と強調する。

 現在、多くの自治体がプレコンセプションケアの推進に取り組み、東京都では都内在住の18~39歳の男性を対象に精液量や精子濃度などの検査費用を助成している。風疹抗体検査(無料)、予防接種の助成制度もある。

 「将来子どもが欲しいが、健康について不安がある、プレコンセプションケアに関心があるという男性は、区市町村の担当窓口や信頼できる泌尿器科医へ相談してみてください」と三戸医長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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