慢性腎臓病と骨粗しょう症
~転倒予防で骨折を防ぐ(福島県立医科大付属病院 風間順一郎主任教授)~
成人の5人に1人が患っていると推計される慢性腎臓病(CKD)。腎機能が徐々に低下し、透析にまで至らなくても体にさまざまな弊害が出る。骨がもろくなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症もその一つ。福島県立医科大付属病院(福島市)腎臓・高血圧内科の風間順一郎主任教授は「CKDの患者さんは、骨粗しょう症治療薬の副作用が出やすいため、骨折を防ぐためにまず転倒予防に目を向けてほしい」と話す。

転倒リスク低減が骨折予防になる(
◇ミネラル調節力低下
CKDとは、腎臓の働きが正常な場合の60%未満に低下するか、タンパク尿などの腎臓の障害が3カ月以上続く状態を指す。
「腎臓は血液をろ過し、老廃物、余分な塩分やミネラル、水分を尿として排出し、体液の濃度を一定に保つ働きをします。体内のミネラル濃度が大きく変動しないように、司令塔である副甲状腺と骨と腎臓で微妙な調節を行います」
骨は体内のカルシウムやリンなどのミネラル貯蔵庫で、副甲状腺ホルモンの刺激を受けて腎臓が各種ミネラルの濃度を調節できるように過不足分を出し入れする。
腎臓は、腸管からのカルシウム吸収を促す活性型ビタミンDを産生したり、ミネラルの再吸収を調節したりする。「CKDで活性型ビタミンDの産生やリンの排出が不十分になると、カルシウムやリンの濃度調節で負荷がかかる副甲状腺と骨にさまざまな異常が起こります」
◇副作用を懸念
CKDでは早期から骨折リスクが上昇することが分かっている。骨粗しょう症の原因として、カルシウム不足を補うため、副甲状腺からホルモンが大量に分泌され骨からのカルシウム放出が加速する「二次性副甲状腺機能亢進(こうしん)症」を発症するケースが多い。
骨粗しょう症を伴う保存期CKDでは、骨粗しょう症治療薬が用いられる場合もあるが、副作用の懸念もある。「薬の作用により骨がミネラル貯蔵庫として十分働かなくなるため、腎臓がミネラルバランスを調節しきれなくなり、カルシウム値の異常を起こしやすいのです」
一方、骨折の原因となる転倒の予防法はいろいろある。「高血圧など併存症の治療薬、視力や歩行の障害、室内の導線などにふらつきや転倒のリスク要因がないかをチェックし、対策を講じるとよいでしょう」
風間主任教授は「服用薬の問題などでふらつきや転倒の心配があれば、かかりつけ医に相談することを勧めます」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/07/05 05:00)
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