Dr.純子のメディカルサロン
模擬裁判の演劇、司法への理解を
~竹下景子さんが出演~

実際の裁判員裁判で判決公判後に会見する裁判員(2017年2月、大阪市)
◇観客がスマホで裁判に参加
海原 「参加型」とのことですが、どういった形態の演劇なのですか。
今井 観客は「裁判員候補者として呼び出された」という設定で会場にお越しいただきます。そして会場の中からルーレットで裁判員6人を選び、舞台下の裁判員席に座ってもらい、被告人、証人に直接質問します。
選ばれなかった観客は、自身のスマホから会場に特別に開設された「チャット」に参加して、裁判の進行中、意見や感想を書き込み、また被告人や証人への質問を書いて、裁判長が代読します。
海原 演劇中に観客がスマホを手にするというのは画期的ですね。
今井 そうです。これまでの演劇ではあり得ないことでしたが、逆にそれがこの公演の大きな特徴となっています。
粛々と進む裁判のその裏で、観客がさまざまな意見を書き込みます。この二面性がまさに斬新で、同じ裁判を見ていても人によって考えていることがこんなに違うんだということを改めて実感します。
審理終了後、裁判員・裁判官は別室で評議して判決を決めます。その際、会場の観客もチャットの投票機能で投票し、その結果を1票として評議室に持ち込みます。
海原 観客全員が自分事として参加するわけですね。
今井 はい。観客全員が参加する「没入型」演劇です。しかも、お越しいただく参観者、そして誰が裁判員に選ばれるかによって、毎回毎回、演劇が、そして判決が変わります。
◇竹下景子さん親子が親子役で参加
海原 今年は東京での開催も計画中ということですが。
今井 8月30日(土)に東京農業大学の横井講堂で行います*。生徒・学生さん向けと一般公開の2公演行います。一般公演には、女優の竹下景子さんが母親役で出演してくれます。被告人役の関口まなとさんは竹下さんの実のお子さんですので、まさにリアルな母子共演が実現します。
海原 2023年から18歳以上が裁判候補者になったんですね。きちんと考える場をつくりたいものですね。
今井 18歳以上への引き下げには疑問の声がありますが、制度としてできた以上、しっかりした体制をとらないと裁判員制度そのものが崩壊してしまいます。犯罪は社会で起きた病理的現象です。その社会に空いた穴を、私たち社会のメンバーが埋める、それが裁判員制度です。
この公演を一般の大人だけでなく、学生など若い人を含め、大勢の人たちに参観していただき、裁判とは何か、法とは何か、また生と死を巡る死刑制度の意義などを深く考え、自身のものとして捉えるきっかけにしていただきたいと思っています。(了)

今井秀智弁護士
今井秀智(いまい・ひでのり) 弁護士。東京農業大学客員教授、国学院大学講師、総務省消防大学講師、**一般社団法人リーガルパーク代表理事、法と教育学会理事。60年新潟県長岡市生まれ。86年司法試験合格後、司法試験予備校専任講師、能力官任官を経て97年弁護士登録。11年一般社団法人リーガルパークを設立。
*「極刑」農大公演 日時=25年8月30日(土)14時30分開演。場所=東京農業大学世田谷キャンパス アカデミックセンター地下1階 横井講堂。詳細はhttps://legalpark.jp/kyokkei/
**一般社団法人リーガルパーク 法やルールの意義を考える「法教育」に関する事業に特化した団体。全国法学生教育連合会( USLE )と連携し、大学生・法科大学院生を引き連れ、全国・小規模・高校での模擬裁判や模擬投票等の法教育授業を展開している。
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(2025/06/06 05:00)
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