元気な赤ちゃん、高齢者も油断しないで
~RSウイルス、手洗い・消毒、ワクチンで予防を~
RSウイルスは、せきやくしゃみの飛沫(ひまつ)や接触によってうつる。そのため、マスク着用、うがい・手洗い、日常的に触れるドアノブやおもちゃなどの小まめなアルコール消毒が大切だ。また、子どもから家庭内に感染が広がるケースが目立つため、孫と一緒に暮らすなど、小さな子と過ごす機会がある高齢者は、その子が通う保育園・幼稚園の感染状況を知っておくと、メリハリの効いた対策が講じられる。
自己負担だが、60歳以上はワクチンの予防接種を受けることも可能だ。
◇初めての感染、6カ月未満は特に注意
RSウイルスには、1歳までに約半数、2歳までにほとんど全員が一度はかかり、それ以降も繰り返し感染する。推定では、年に12万~14万人の2歳未満がRSウイルス感染症と診断され、そのうち、約3万人が入院する。
入院が多いのは、この感染症では基礎疾患を持たない子も重症化するからだ。
症状が重くなりやすいのが、初めて感染したときや生後6カ月未満の赤ちゃん。最初の感染時、約3割の乳幼児で細気管支炎や肺炎の兆候が見られるという。もちろん、早産や低体重で生まれたり、心臓や肺に疾患を持っていたりするとリスクがあるため、そうした子も注意が要る。
小児科医の森戸やすみ氏は「元気に生まれ、普通に暮らしていた赤ちゃんが突然、具合が悪くなって入院する。これがRSウイルスの怖いところだ」と警鐘を鳴らす。
入院すると、親の仕事やきょうだいの生活にも影響し、経済的にも負担になる。また、海外の調査では、RSウイルスで入院した子どもは、入院していない子どもに比べて、ぜんそくの発症率が高いとも報告されている。

妊婦がRSウイルスワクチンを接種すると、生まれてくる赤ちゃんに抗体が移行する
◇母子免疫を生かす
基本的な感染対策を続け、せきや鼻水の症状があるきょうだいや大人に赤ちゃんを近づけないことなどを心掛けても、知らぬ間にかかってしまうことはある。森戸氏は、赤ちゃんから喘鳴や激しいせき、たんの絡んだ湿ったせき、顔色が青白いなどの症状、ミルクを飲まないなどの異変が見られたら、すぐに受診するよう勧める。
産婦人科医の宋美玄氏は、赤ちゃんをRSウイルスから守る最善手にワクチンを挙げる。接種するのは妊婦で、注射を打つと、抗体が母体から胎児に引き継がれ、生まれてきた赤ちゃんの感染や重症化を防ぐ効果が期待できる。この母子免疫を生かしたワクチンは、国内では昨年登場したばかり。接種の機会が増えるよう、産婦人科医や小児科医らが情報発信に力を入れているところだ。
「このワクチンは赤ちゃんへの最初のプレゼント」と宋氏。ワクチンの効果や費用、副作用も含め、「気になるお母さんはぜひかかりつけ医に相談してほしい」と呼び掛けた。(及川彩)
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(2025/06/05 05:00)
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