治療・予防

元気なうちにワクチンで予防を=50歳以上で急増する帯状疱疹

 50歳以上の人に帯状疱疹(ほうしん)予防の目的で水痘(すいとう=水ぼうそう)ワクチンを接種することが承認され、日本でも欧米並みの帯状疱疹予防が自費で可能となった。まりこの皮フ科(横浜市)の本田まりこ院長と東京慈恵会医科大学(東京都港区)の新村真人名誉教授に、帯状疱疹の予防の意義について聞いた。

 ◇今、増えている理由

 水痘と帯状疱疹は、ともに水痘・帯状疱疹ウイルスが起こす病気だ。このウイルスに感染した人(多くは子ども)は水ぼうそうになる。水ぼうそうが完治した後もウイルスは神経節に隠れて免疫細胞の攻撃をかわし、何十年もひっそり潜伏する。

 加齢や病気、強いストレスや薬の影響で免疫が弱まると活動を再開し、皮膚と神経で増殖。神経に痛みを起こす帯状疱疹を発症させる。これらの症状は通常、数週間で治まるが、帯状疱疹後神経痛になって強い痛みに長く苦しむ患者も多い。

 水ぼうそうに関しては、2014年からすべての小児にワクチンを接種する定期接種が導入され、患者は劇的に減った。「ところが、その結果、帯状疱疹患者が増加してしまう恐れがあります」と、本田院長は注意を促す。

 従来、帯状疱疹は水ぼうそうの多い冬に減少し、子どもと触れ合う保育士らに発症の少ないことが知られていた。保育士は子どもを介して水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に入ることで免疫が刺激、増強されるからだ。「逆に子どもの水ぼうそうが減ると、社会全体としての免疫が弱まり、帯状疱疹が広がりやすくなるのです」と新村名誉教授。

 ◇高齢者は早めに予防

 本田院長が特に懸念しているのが、1人暮らしの高齢者が帯状疱疹になったときのリスクだ。強い痛みから引きこもりやうつ、認知症につながる例が少なくないからだ。

 実際、帯状疱疹は高齢者に多く、発症率は50代で増え始め、70代でピークとなる。これらを踏まえ、2016年、水ぼうそうワクチンの「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」の効能が承認された。「このワクチンで帯状疱疹になる恐れは半減し、発症しても症状は軽くなります。恩恵は大きい」と本田院長は歓迎する。

 だが、問題点もある。帯状疱疹になるのは何らかの理由で免疫が弱まった人だが、このワクチンは、免疫機能に明らかな異常のある人や免疫を抑制する治療を受けている人は接種できないからだ。

 実際、がんやリウマチなどで免疫を抑える治療を受けている患者の間では、帯状疱疹が深刻化している。「50歳を超えた方は、元気なうちにワクチンによる帯状疱疹予防を心掛けてほしい」と新村名誉教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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