Dr.純子のメディカルサロン

猫はお好きですか?

 私は猫2匹と同居しています。猫たちは3代目と4代目。もうすぐ16歳になる女の子と11歳の女の子です。猫の16歳は人間に換算すると80歳くらいだそうですから、もう「女の子」という年齢ではないですね。

 この猫たちがいなくなったら「5代目はもう飼えないなあ」と思っています。5代目が寿命を全うするまで、こちらが生きられるかどうか分からないからです。猫好きにとって、猫との暮らしは精神的な落ち着きと安らぎをもたらしてくれます。しかし、自分の死後、残された猫がどうなってしまうのかと考えると飼えない、というのは寂しいですね。

 数年前、そんな話をドイツに住む獣医師、クレス聖美さんに打ち明けたら、「ドイツには自分の死後、飼っていた猫を預かり育ててくれる施設がある」と教えてくれました。ドイツでは、それを猫の「ティアハイム(保護施設)」と呼んでいます。

 クレスさんは北海道大獣医学部を卒業した後、すぐにドイツに渡りました。そして1982年から30年間、ダルムシュタット市でドイツ人の夫とともに、1日80匹の動物をケアするドイツ国内有数の動物病院を経営。2012年からはメンターとして若い獣医師の指導にも当たっています。日本では東日本大震災後、宮城県石巻市の田代島で猫の保護を定期的に行っており、その活動が縁で私はクレスさんと知り合いました。

 クレスさんによると、ドイツではペットショップで猫を買うことはほとんどなく、保護された猫を引き取って飼うのが一般的だそうです。クレスさんも16年、ご自分の猫を亡くした後で新しい猫を飼うとき、なんとモスクワの裏道のごみ箱に捨てられていた子猫を引き取ったそうです。

 ヨーロッパではこうした保護猫情報ネットワークが整備されていて、ボランティア登録した方がモスクワから旅のついでに猫をドイツへ連れてきてくれるのだそうです。「動物に対する感覚や関わり方が日本とは違う」とクレスさんは言います。日本は文字通り猫かわいがりしたり、犬に洋服を着せたりするけれど、ドイツではそのようなことはなく、人と動物は対等の関係なのだそうです。

 昨年、クレスさんが中心となって日本トラウムハイム協会が発足しました。この協会は、終末期ケアを含めた老猫・老犬ホームの設立、飼い主が飼えなくなった猫や犬の受け入れ、里親探し、受け入れた犬や猫の世話をしてくれる元気なお年寄りや若者の確保(高齢者や若者にとっては働く機会の獲得)、子供たちに対する動物や命との関わりを学ぶ場の提供-などを目的としており、それらを実践する施設を作ろうと準備しているところだそうです。

 17年9月3日、ドイツ文化会館で日本トラウムハイム協会の第2回シンポジウムが開かれ、私も「動物との関わりとメンタルヘルス」についてお話をさせていただきました。こうした活動は、ドイツではすべて寄付金で運営されているそうですが、日本ではなかなか難しいそうです。

 ドイツのティアハイムでは、猫は檻に入れられることなく、広々とした空間を歩き回っています。日本でも同様の取り組みが広がれば、老後も安心して猫が飼えるのになあと思いました。(文 海原純子)


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