低血糖〔ていけっとう〕 家庭の医学

 低血糖とは血糖値が異常に低下した(たとえば60mg/dL以下に低下)状態をいいます。脳はエネルギー代謝のほとんどをぶどう糖に依存しているため、低血糖の影響を受けやすく、低血糖は脳の機能低下を引き起こし、いちじるしい場合には低血糖昏睡となります。

[原因]
 さまざまなものがありますが、インスリン注射や経口糖尿病薬による薬剤性のものが頻度が高く、重篤な場合には生命の危険があり注意すべきです。食事の不十分な摂取、過激な運動、食事の遅れ、薬剤の過剰、下痢・嘔吐(おうと)などが誘因となります。そのほか、まれですが、インスリノーマ(膵β〈すいベータ〉細胞の腫瘍によるインスリンの過剰分泌)、インスリン自己免疫症候群、腫瘍によるもの、重篤な肝障害や腎障害、内分泌疾患(副腎不全、下垂体前葉機能不全)などが原因となります。

[症状]
 低血糖状態は糖尿病の項(糖尿病とは)を参照してください。症状が空腹時か、食後3~4時間に発症するかは大切な点です。食後の場合には反応性低血糖と呼ばれ、胃切除後や糖尿病の初期、さらに原因不明の場合があります。

[診断]
 低血糖が疑われる症状があらわれたとき、血糖値を測定し、低血糖を確認することが重要です。低血糖時の血中インスリンの測定も有用です。インスリノーマは各種画像診断(超音波、CT、血管造影検査など)が必要です。

[治療]
 原因によって異なりますが、低血糖時にはぶどう糖投与など対症的な処置が先決です。インスリノーマは外科的な腫瘍摘出が有用です。

(執筆・監修:東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長/東京女子医科大学 特任教授 内潟 安子)
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